安全、安心、省力化、快適化
次世代農業の可能性を提案する企業群
最新の畜産情報や技術をプレゼンテーション
6月10日から12日の3日間、愛知県名古屋市のポートメッセなごやで開催された「国際養鶏養豚総合展2015(「IPPS JAPAN」)」に行ってきました。このイベントは、3年ごとに開催される国内最大の畜産見本市。養鶏・養豚に関わる事業者を主な対象に、先進地であるヨーロッパをはじめとする国内外のメーカーが、最新の情報や技術をプレゼンテーションする展示会です。
バラエティー豊かな出展企業
出展しているのは、鶏舎、豚舎の建築や設備に携わる企業、ケージや柵などのメーカー、自動給餌システム、卵の自動パッキングマシンなど養鶏・養豚におけるさまざまな機械設備・装置のメーカー、畜舎の排泄物処理や肥料化、エネルギー化など再資源化装置を提案する企業、餌メーカー、薬品メーカー、そして種鶏生産者やファーム事業など、その数実に154社637団体。見本市の名にふさわしい多彩さと、規模の大きさに圧倒されました。
「食」の安全・安心を支える技術
視察中、出展メーカー、養鶏・養豚業の経営者20人ほどにお話しを聞く機会を得たのですが、出展社、招待客の双方が口をそろえていたのが、「食」を扱う業者として、いかに安全・安心に配慮しているかという点。そして、例外なく「日本人の食」への責任を感じながら事業を進めていると、異口同音に語っていたのが印象的でした。鳥インフルエンザなどの防疫問題、TPPの行方、日本の食料自給率の圧倒的な低さ、トレーサビリティの信頼性など、数え切れないほどの課題を背負っている日本の農業と、それに直接、間接に携わっている人々の切実な状況を垣間見た思いです。
「環境」対応に注目
多彩な展示の中で注目を集めていた分野の一つが、環境対応をテーマとする展示です。大規模化が進む養鶏・養豚の現場。太陽光をはじめとする自然エネルギー、バイオマス利用やハイブリッド機構によるCO2排出量削減および省エネのための取り組み、廃棄物削減やリサイクルへの視点など、装置、設備、資材など多角的な観点からの提案が目を引きました。また、臭気、温度・湿度など畜舎内の空調に関する対策など、畜舎内外の環境を向上させることに多くの企業が熱心に取り組んでいる様子もうかがえました。
農業従事者に「楽」を提案
もう一つ、特徴的だったのが、農業従事者の仕事現場を楽にする取り組みです。コンピュータ制御による畜舎内の環境管理、自動給餌、個体管理など、自動化を推進してきたこれまでの取り組みに加え、給餌システムのウォッシャブル(洗浄できる)化、畜舎の清掃ロボット、糞尿の自動処理装置など、現場の「苦労」「大変」な作業を代行する機械・装置が、後継者不足の悩みに一石を投じるものとして注目を集めていました。一般家庭でさえお掃除ロボットが活躍する時代です。農業の現場でのロボット機構は、今後、ますます進んでいくに違いありません。
農業の転換期を目の当たりに
この展示会が前回行われたのは2012年。この3年の間に日本の畜産を取り巻く環境、エネルギーや資源に対する世論や人々の意識は大きく変化し、建設、防疫化学、機械、設備などあらゆる分野で著しい進化が進みました。それを反映しての今回の「IPPS」です。展示は養鶏・養豚に主眼を置くものですが、日本の農業が激動の時代といっていいほどの転換期にあることを認識させられる展示会でした。農業従事者は規模の大小にかかわらず、将来を見据え、確固たるポリシーと経営への目線を持って取り組まない限り、生き残りが厳しいことも、こうした展示から見て取れるのでした。その一方で、ブランド化を果たし、エンドユーザーの心をつかんで成功しているファーマーも数多く来場しており、互いに情報交換する姿がちょっと輝いて見えました。そうした積極性も、これからの農業従事者には必要な資質なのかもしれません。
今回は3日間で国内外ら21,000人が来場したそうですが、それぞれどんな思いを胸に会場を後にしたのでしょうか。