種類豊富な草刈機と安全な使用方法についてて徹底解説します!|モア編
新規就農する方のみならず、全ての農家さんを毎年困らせるのが「草」の存在。そこで活用されるのが草刈機です!
一概に草刈機と言ってもその種類は多種多様です。今回の記事ではそんな草刈機について詳しくご紹介します。
また、今回は草刈機の種類についてご紹介するとともに、草刈機の使用中に実際に起きた事故例についても説明します。この記事を読むことで、草刈機についてはばっちり知識を培うことができるでしょう!
草を刈る機械は大きく2タイプ
草を刈る機械は、「刈払機」と「草刈機」、大きくこの2つに分けられます。「刈払機」は水田のあぜ道、道路脇の雑草、山林の下草など、狭いスペースや傾斜面での草刈りに使われる機械です。
「草刈機」は、果樹園の下草刈り、牧草地やゴルフ場といった、平坦で広い場所での草刈り作業に使用されるもので、乗用式と自走式があります。
「刈払機」と「草刈機」、名称は混同されたりしますが、ここでは円盤の回転ノコで草を払う機械を「刈払機」、刈取りカバー内の回転する刃で草を刈るものを「草刈機」と呼ぶことにします。
草刈機(モア)の概要
刈払機は、高速で回転する刃を振って草を刈るので、テクニックや体力がいるし、危険も伴います。
“モア”と呼ばれる草刈機は、機械が自走しますし、刃もムキ出しではないので、刈払機と比べると安全性は高い機械。
ただ、各地で負傷事故も起きており、やはり作業の際は細心の注意が必要です。モアは広い牧草地や休耕地、農道、あぜ道、芝地、整理された果樹園など、広々とした平坦な場所で使われる草刈り機。
極端な傾斜地や狭く障害物の多い庭といったところには向きません。
ヒトが乗って運転するタイプは“乗用モア”、歩きながら草を刈るタイプは“自走式モア”もしくは“オートモア”と呼ばれています。
ちなみに、草刈機の“モア”は“mower”で、“more”ではありません。
草刈機(モア)の種類
乗用モア
ヒトが乗って、ハンドルで方向を操作しながら、座席の下の回転する刃で草を切り刻んでいきます。
よく使われる表現は“ゴーカート感覚の草刈り”。楽しみながらは大げさにしても、軽快に草刈りができます。
走行方式は2輪駆動が一般的ですが、4輪駆動もあり、クローラーといわれるブルトーザーのキャタビラーのような車輪で動く傾斜地などに強いタイプもあります。
ゴーカート感覚で比較的楽に草刈りができる乗用モアですが、基本的に公道で走ることはできません。
ただ、一部、小型特殊自動車に区分される乗用モアもあり、原動機付き自転車免許のように、運転免許センター・運転免許試験場で学科試験を受けて“小型特殊自動車”を取得すれば、公道走行も可能です。
自走式モア
耕うん機や管理機のように、機械の後についていきながら草を刈っていくタイプ。
小回りがきくので、狭い場所や不規則に障害物がある場所で使われます。
基本的には、管理機の土を耕す機能が、草を刈るようになったという感じです。
芝刈機
ゴルフ場などの芝地では、切り刻んだ草がそのまま残っていると、下の芝が光合成ができなくなるなど、傷んだり枯れてしまったりする原因になります。
なので、刈った細かい草を風力で袋に集める構造になっていて、自動的に回収できるようになっているのが一般的な芝刈機。
タイヤも芝を傷めないように、ゴルフ場のカートと同じターフタイヤが多く使われています。
牧草用
牧草地の草刈りは、家畜が食べる草なので切り刻んでしまわないように、草の根元から刈り倒していく仕組みです。
刃が回転運動するロータリー式と、先端に並んだ刃が往復運動するレシプロ式があります。
トラクター用
トラクターに取り付けて草を刈るタイプ。トラクターの3点リンクで装着して、PTO(パワー・テイク・オフ)から動力をもらって駆動します。
最近は、トラクター用アーム式草刈機という大がかりなものも登場。長いアームの先端に草刈機が付いていて、レバーでアームをコントロールして、まるでロボットのように草を刈ります。
草刈機の刃の種類
ハンマーナイフ式
水平のドラムにいくつものY字型の刃が取り付けられており、この刃が回転することにより草を切り刻む方式です。
刃は固定されているのではなく、1点の支点を中心に振り子のように動きます。ドラムが回転すると、遠心力で動く刃が外側に引っ張られて、先端のY字型の刃先が草を細かく刈り刻む仕組みになっています。
遠心力で草を切りますが、石など硬いものに当たったら、固定されてないので跳ね返るだけ。刃が折れたり、曲がったりしないような工夫です。
刃は両刃になっており、片方の刃の切れ味が悪くなったら、方向を変えて取り付ければ切れ味は復活します。両刃とも消耗したら交換です。
ドラム式なので、絡みつくツル草はちょっと苦手ですが、背丈のある草から低い草、笹にも対応できる優等生的な方式。休耕地の草刈りはもちろん、果樹園の下草刈りなどに広く使われています。
トラクターに取り付ける草刈機は、ほとんどがハンマーナイフモアになります。
ロータリーナイフ式
地面と平行に取り付けられた刃がグルグル回って、草を刈って切り刻みます。
一般的に10本以上の刃をもつハンマーナイフ式に比べシンプルな刃のロータリーナイフ式は、刃を交換する手間とコストが少なくてすむのが長所。
刃の構造上、石など障害物に弱いという短所もあります。
ロータリーナイフ式は、ナイフが回るという動作はいっしょでも、ナイフのカタチによって3つの種類に分けられます。
バーナイフ型
単純に水平な刃を回転させるタイプ。コストが安いので、比較的に軽量な乗用・自走式モアに使われています。
刃は硬い1本のバーなので、ハンマーナイフのような柔軟性はなく、石などの障害物に弱のが欠点。逆に、シンプルなのでメンテナンスは楽になります。
フリーナイフ型
基本的にはバーナイフ形と同じ構造ですが、ナイフステーと呼ばれるナイフを支える部分の先端にある、ハンマーナイフのような柔軟性のある刃で刈るタイプ。
石などの障害物に刃先が当たったら、フリー式なので刃が逃げてくれます。
ただ、刃先でなくナイフステーの部分に大きな石が当たったら場合、ダメージを受けることがあるので、大きな障害物は避けましょう。
クロスナイフ型
十字の刃がプロペラのように回って、草を刈っていくタイプ。
刃が4本あるので、2本の刃が回転するバーナイフやフリーナイフに比べ、1本の刃にかかる負担が少なくて、草をより細かくできるメリットがあります。
石などに当たった時、刃が逃げられないという点は、バーナイフと同じです。
ただ、大きい障害物は、どの刃にも共通する厄介物なので、あらかじめ場所は把握しておきましょう。
草刈機の安全性について
刈払機に比べ、安全性が高いと思われがちな草刈機ですが、刃物が高速回転していますし、エンジンで移動する機械ですから、作業中に危険は伴います。
ここでは、現実に起きた事故を例に、操作上の注意点を記したいと思います。
事故例1:
草刈り中に自走式モアが溝に落ち、引き上げるためにバックした時に転倒。足がモアに巻き込まれ右脚を切断した。
◇事故状況◇
70代の男性が、草刈りをしていた時に自走式モアが溝に転落。バックして引き上げようとした際にバランスを崩して転倒してしまいました。
回転しているモアの刃が右足に触れて損傷。とても複雑な損傷だったため、医師の判断で切断することになり、現在は義足で生活されているそうです。
◇原因と対策◇
自走式モアが落ちた溝は、背丈の高い草に隠れていて、男性は気づかなかったようです。
引き上げる時にバックするのは当然の成り行きだと思われますが、バックさせた時に、刃の回転クラッチを切らなかったことが事故の原因。
バックする際、刃の回転クラッチを切ることが事故防止のポイントです。
事故例2:
自走式モアで、刈り残しの草を刈るためにバックした時に、傾斜面をモアもろとも落下。腰椎を骨折してしまった。
◇事故状況◇
傾斜面の上の平らな部分を草刈していて、足元の刈り残し部分を刈ろうとしてバックした際に、傾斜面をモアといっしょに5メートル落下。
モアの下敷きになるカタチになり、X線検査の結果、腰椎が骨折しており、38日間、入院生活を送ることになりました。
◇原因と対策◇
後ろを確認するのを怠ったこと。禁則であるバックしながらの草刈りを行ったことが事故を招いた原因です。
後進する時は、後ろの状況をちゃんと目視で確かめてから。刈り残しの草は、方向転換して、前進で刈り取るべきでした。
事故例3:
畔(あぜ)で、自走式モアを使って草刈り作業中に、小石が飛んできて右足に当たり、左親指を骨折。
◇事故状況◇
自走式モアで、50代の男性が高速の前進で畔と農道の草刈りをしていた時に、モアで跳ねた石が右足を直撃しました。
その後は作業はできず、足の痛みは続き、腫れてきたので病院へ。医師から、右足親指の骨折と診断され、ギブスで足の指を固定しました。
◇原因と対策◇
自走式モアの刈取りカバーの裾から地面までの間は6~6.5cm。この隙間から石は飛んできて、右足に当たりました。
高速の前進で作業していたのが飛び石の原因。低速前進でゆっくり草刈りをやるか、安全靴とすね当てをつけるかの対応が必要です。
事故例4:
トラクター用モアの近くで操縦法を教えてもらっていた人に、こぶし大の石が当たり指を骨折した。
◇事故状況◇
トラクターにモアを取り付けての草刈り作業を、熟練者に教わっていた50代の女性の腹部をめがけて直径10cmほどの石が飛んできました。
女性はとっさに手でブロックしたらしく、医師の診断は“親指の骨折”。女性とトラクターの距離は10m程度でした。
◇原因と対策◇
モアの刈取りカバーのスカート部分が一部壊れていて、そこから石がストレートに飛んできたのが原因です。
モアの取扱説明書には、
「刈取り部からは石等の異物が飛散し、周囲の人や車、建物等に被害が及ぶ恐れがあります。作業中はこれらのものと十分(半径10m以上)な距離を置き、安全に注意して下さい」と「警告!」があります。
10m以上とはいわず、ヒトの姿が見えたら作業を中止するべきです。もちろん、破損など事前の点検もお忘れなく。
ここまで“草刈機(モア)”の種類や安全性について述べてきました。
草刈機は、ご自分の草刈り環境をよく確認して、用途にあったものをお選びください。
“草刈機”と“刈払機”はお互い長所と短所があります。場合によっては使い分けが必要です。
ただ、いずれも刃物を動かす機械。取り扱いには細心の注意をはらいましょう。
最後に
草刈機は、さまざまなメーカーから年々進化したものが世に出てきています。面倒な草刈りが楽になった一方で、機械を扱うので危険とは常に隣り合わせです。
自分の使用目的にあった草刈機を選び、安全を常に心がけて使用することが大切です!
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