農に対する師の思いを胸に〜株式会社LIBRE. インタビュー part3
株式会社LIBREさんインタビューの最終回では、お二人にとっての仕事でのやりがいや苦労している点、今後の展望などについてのお話を対談形式でおまとめしました。
(編集部:)
お二人にとって仕事のやりがいとはなんですか?
(大浦さん:)
やっぱり農業っていうのは、自分が頑張った分だけ自分に返ってくるっていうのがあると思うんですよ。だからちょっとでも自分が楽しようとか思ったら、やっぱりそれだけのものしか作れなかったりとかして。
野菜に愛情を注いだときは、その分向こうからの返りが、「大きく育ったよ」「美味しく育ったよ」という風に感じることができます。
その収穫の喜びっていうのが一番ですね。
あとその収穫した物を、お客様に「あれおいしかったよ」って言っていただけると喜びもひとしおです。
(岩下さん:)
大浦と本当に同じ気持ちですね。
営業をやっていたときは数字がつきまとって、その数字をあげれば会社としては評価されますし、そういった部分での達成感とかやりがいはあります。
農業を現場でやるというのは自然の中でやっていくということなので、冬場だと寒いし、夏は暑いし、ということもあり、冷暖房の効いた室内で仕事していた頃と比べると、すごく過酷だなあと思う部分もあるんです。
でも先ほど大浦が言ったようにですね、育てた物が商品として出ていくときの喜びっていうのはなんと言うか、こう、何にも変えられないというか。そしてそれがまたしっかり売れていくところを見た時に、やっていてよかったなあという風に思いますね。
(編集部:)
岩下さんがおっしゃった内容と重複するかもしれませんが、お仕事で苦労されている点はどんなことでしょうか?
(岩下さん:)
ミスズライフの時に少し農業をかじったとはいえ、まだ1年生なので、わからないことが多く、日々勉強の部分が多い点ですね。同じようなやり方でやっても前回と違う結果になるというようなことが多々あるんですよね。
(大浦さん:)
やっぱり天候と気温は、1年365日、毎日違いますからね。
(岩下さん:)
そこを、日々なんでだろうなあ?と考えています。
(大浦さん:)
日々勉強だよね。
(岩下さん:)
うん。そこが大変ではあるけど、面白さでもあるのかなという風に感じます。大変だとは思わずに、面白いなと思うようにしています(笑)
(編集部:)
レタスや葉物野菜は1年中採れるんですか?
(岩下さん:)
そうですね。どうしても気温差で生育速度は変わってくるので、今だったら1ヶ月弱で採れるのが、冬場だと(生育期間が)2倍くらいになるんですよね。昨年に関しては暖冬だったので冬でも普通に40日くらいで採れる感じでしたね。繰り返し収穫しては種を撒いて、というサイクルでやっています。
(編集部:)
今後生産者として実現したいことはありますか?
(岩下さん:)
今作っているミックスレタスや葉物野菜を、もっと安定して生産して、ゆくゆくは規模を拡大していきたいなと思います。
それがさらに安定的にできるようになったら、できるかどうかは別として、担い手がいないとか継ぎ手がいない農家さんのみかんの栽培を自分たちが引き継いでできるようになればいいね、ということを大浦と話しています。農家さんに継ぎ手がいるのが一番の理想なんですけど、もしそれができないってなった時に無くなるのは惜しいかなと。せっかくいい物なので、それを自分たちがなんとか会社としてできないかなと思っています。
(大浦さん:)
自分たちだけが利益をあげるのではなくて、周りの農家さんたちも一緒に利益があがって、ああしたらいいねとかこうしたらいいねって、もう地域全体で盛り上げていけたらなっていうのが一番の理想ですね。年配の方はいい物を作っていらっしゃるんですけど、もう直売所までも持って行けないっていう方が結構いらっしゃって、そういう方のためにそこまで取りにいって、自分たちがどこかに出荷してあげられたら、という理想はあります。
(岩下さん:)
農家さんは作ることにとても力を注がれていて、どこに出しても恥ずかしくないもの、素晴らしいものを作られているんですけど、売ることに関しては、JAさんにお願いして、値段が高かろうが安かろうが、それで受け容れるしかないという感じだったと思うんです。なので私たちが今やっているような、直接お客さんに売るというモデルを活用したいと思っています。
(編集部:)
今後の事業の展望についてお聞かせください。やはり根底にあるのは持続可能な農業の実現、というところでしょうか?
(岩下さん:)
今回のコロナ騒動とかを考えると、食べ物の大切さがさらに浮き彫りになってきたのかなと思っています。海外の方にまでこのような状況が広がって、もしこの状況がずっと続いていけば、今まで海外から入ってきていた物が入ってこなくなり、そうすると国内での自給率をあげていかないと本当に野菜が食べられないという未来が待っているかもしれない。
そう考えると日本でもっともっと農業を盛り上げていかないと、農業を下支えしていく必要があるのかなって感じていますし、そういう思いを持つ人たちを一人でも増やしていくべきなのかなという思いはありますね。
(大浦さん:)
全く同じなんですけど、今回のことで農業って大事なんだなって、自分がやっていても実感したんですよね。
(編集部:)
農家さんって本当すごいことやってくれてるよね、ありがたいよねっていう声もネットとかで上がっていますもんね。
(岩下さん:)
国として農業を活性化していくことについては、もっと真剣に取り組みスピードを上げてやっていかないといけないと思います。
ヨーロッパの先進農業とかは、同じハウス農業にしても、IT化がすごく進んでいたりとかして、そういった場面でも日本はまだまだ遅れています。
なのでそういった部分をスピードを上げて取り組んでいって、いかに農業が儲かるかっていう仕組みを作る必要があるなと感じています。
(編集部:)
農業が儲からない産業だって思われてしまうと、担い手も減ってしまいますね。
(岩下さん:)
絶対にやる人はいないと思います。
(大浦さん:)
儲からないし重労働だから・・・ってなってしまう。(でも本当は)そうじゃないんだよっていうのを証明したいですね。
(岩下さん:)
今は重労働だけどご飯は食べていけるっていう段階なので、今後は重労働がもっと軽減されるようなIT化が進んで、農業は働きやすくて食べていけるっていうのが理想としているところですね。
今のリブレではIT化はまだまだで、アナログなんですが、今後は取り入れていきたいです。
そういったところも国が補助金出してくれたりとか、そういうのがあればいいですね。
やりたくてもやれないっていうのが現実だと思います。
(編集部:)
農業は初期投資が非常にかかると聞きます。
(岩下さん:)
そうですね、そういうのを高齢の方が今から投資してやるかと言ったら絶対にやらないと思うので。若い方がやっていけるようにできれば一番いいかなと思います。
まとめ
循環型農業や耕作放棄地の問題に対する姿勢など、今回のインタビューではリブレのお二人の農業に対する真摯な姿勢に触れることができました。
以前Humans of 農業で取材をさせていただいた澤山さんは、一人の農家として、耕作放棄地問題について真剣に向き合っていらっしゃる方でした。
全員が全員そういった考えを持つことができるのが理想であるとは思いますが、なかなかそうはいかない現状がある中、リブレのお二人が ”株式会社LIBRE” としてこのような問題に取り組んでいらっしゃることは非常に有意義なことだと思います。
一人では太刀打ちできないような問題でも、会社という大きな存在が一緒なら、解決に向けて一歩前進できるかもしれない。
さらにそれら会社や一個人を支えていくには、国全体でその問題について取り組んでいく必要がある。
岩下さんはインタビューの最後に相談できる窓口の必要性について語ってくれました。
そうした窓口をもっと活用できるように国全体で取り組んでいけたら、日本の農業の未来も明るくなるのかなと思います。