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始めよう”環境保全型農業”。 Part.1

“環境保全型農業”の代表選手である”有機農業”をピックアップ。

環境保全型農業“。なんだかカンタンなのかムズかしいのかわからないコトバですよね。農林水産省によると、「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負担の軽減に配慮した持続的な農業」とのことです。これもわかるようなわからないようなカンジ。

ようするに、「人工でない自然のモノを循環させて土壌を豊かにして、化学肥料や農薬に依存しないでも収穫が上がるような農業」って意味ですかね。

ということは、有機農業がその代表ということになるのかな。そのほか、有機農法以外でも、堆肥の施用、カバークロップ、リビングマルチ、草生栽培なども当てはまるそうです。アイガモや鯉を水田に放つ農法も入ったりするのでしょうね。これから、いろいろひも解いていきたいと思いますが、まずは化学肥料や農薬を使わない有機農法をピックアップ。とくに微生物をうまく利用した農法をご紹介したいと思います。

有用な微生物たちが活躍するEM菌農法。

おそらく、微生物を介するもので日本でいちばん知られているのが、この”EM菌農法”ではないでしょうか。EMはEMpathy(共感)からきていて、だれでも共感できる菌、というのは真っ赤なウソです。本当は、Effective(有用な)Microorganisms(微生物たち)の頭文字をとったもの。”たち”というぐらいだから、ひとつの菌ではありません。乳酸菌や酵母、光合成細菌といった、自然界にフツーに存在する善玉菌の集りです。

EMには酵母などの発酵系微生物が多く含まれており有機物をスムーズに発酵させ、堆肥として農地に撒けば作物の生長を促します。また、EMの中には微生物たちがつくった代謝物もあり、それをすでに土壌中にいた微生物がエサにして活性化。種類も多様化するのです。EM菌農法は微生物を活用することによって様々なメリットをもたらします。土壌を改良して、病害虫を抑えたり、作物の品質を向上させて収量を増やしたり。いろいろ良いことが連鎖的に起こります。

ただ、こんな効果が期待できるまでになるのは1日にして成らず。良い働きをする微生物がいっぱいになるまでにはそれ相応の時間がかかります。”果報は寝て待て”というぐらいの気分で焦らずにEM菌農法を続けるべきです。ちなみに、”果報は寝て待て”は、”なにもしてくても寝ていれば幸運がやってくる”という意味ではないですからね。”ちゃんと努力はして、いらだつことなく気長に良い知らせを待つ”ことですよ。ひとつの有機農法に出会ったら、“焦らず”、”怠らず”、”諦めず”に続けることが大切なのではないでしょうか。

酵母
乳酸菌

竹藪の微生物が働いてくれるSADAJI農法。

SADAJI農法の”SADAJI”。SADAJI農法を考案した山崎定次さんの名前に由来しています。40年前、定次さんが始めたのがお茶畑用の発酵肥料の開発。「”地力”が落ちてしまった土壌を30年前に戻そう」という意気込みのもとのスタートです。

当時のお茶畑の土は終戦直後から続いた化学肥料の過剰施肥で飽和状態になっていました。化学肥料漬けになり、そこに生息していた微生物が激減。”地力”がめっきり弱くなっていたのです。「土壌を活性化して”地力”をつけるには有効微生物を増やすことだ」。まずは”好気性”つまり酸素を必要とする菌の培養から開始しました。ところが、発酵熱が予想以上に高く、4年ほどで頓挫。好気性の菌は諦めることになります。

その後すぐに、今度は酸素を嫌う”嫌気性菌”にチャレンジ。前記した”EM菌”の登場です。嫌気性なので発酵熱は低く成功したかにみえましたが欠点が発覚。ナイーブなEM菌は、元もとから居着いていたワイルドな土着菌に殺されてしまい、効果が1年しか保てなかったのです。「EM菌は永年作物であるお茶には向かない」。”嫌気性菌”でも失敗してしまいました。

「よそ者のEM菌は土着菌に嫌われるが、土着菌同士だったらどうだろう」。新たな発想です。いろいろな場所の土着の菌を試した結果、竹藪の中の菌がいちばん良いことがわかりました。その菌を培養し動物性有機物や米ぬかなどを混ぜて発酵させた肥料は1年以降も効果が持続。土着菌に仲間意識が芽生えて仲良く土づくりに励み続けたようです。SADAJI農法。お茶栽培に特化した技術ではあるけれど、野菜などにも悪くないのではと思いますが、いかがでしょう。

バーミキュライトが微生物が育てるVS農法。

VSは”ブイエス科工”という会社名からきています。VSはバーミキュライト(vermiculite)の”V”とソイル(soil:土壌)の”S”の組み合わせです。でも、”バーミキュライト”ってなんだろう? おそらくホームセンターなどではよく見かけていると思います。土というか砂というか、フツーの土よりツブツブが大きいといったらいいのかなぁ。苗を買った時にポットに入っているのもバーミキュライトを混ぜた土が多いはずです

。”ブイエス科工”は、早くよりバーミキュライトに注目し、有効微生物を培養し吸着させて培養土や土地改良資材などをつくってきました。バーミキュライトは大きなすき間のある鱗片状の粘土鉱物。原石を高温で急加熱するので、水分が蒸発して鱗片状に膨れ上がりすき間ができるのです。すき間には水を蓄えられるので培養土にうってつけ。しかも、高温処理するので無菌状態。育苗の際に病害虫の発生が抑えられます。土地改良資材として使う場合、すき間は有効微生物が棲みやすいねぐら。培養した放線菌、糸状菌、酵母などがしっかり吸着します。

“ブイエス科工”の代表的な製品が”VS36″です。”ブイエス科工”は、この”VS36″の培地として堆肥やボカシ肥料を併用する技術の総称を”VS農法”としています。”培地”とは微生物が育つ栄養が豊富な場所。つまり、VS36を堆肥などに混ぜ、微生物たちをしっかり培養して土壌のチカラをつけようということです。
最後に、バーミキュライトの安全性について。かなり前のハナシですが、建材用のアメリカ産バーミキュライトにアスベストが含まれていたことが発覚しました。バーミキュライトとアスベストの採掘場が近かったので混入してしまったことが原因です。ただ、現在この産地は閉山しており、そもそもVS農法のバーミキュライトは国産なのでゼンゼン問題ありません。

バーミキュライト

フランスが発祥の”コフナ 利用のCOFUNA農法。

COFUNA(コフナ)はフランス語。でも、たぶん辞書には載っていないと思います。造語だからです。フランス語のCOmpagnie(会社・仲間)、FUmures(腐植・堆肥)、NAturelles(自然・天然)でCOFUNA。コフナはフランスのパスツール研究所の指導によりつくられた微生物資材です。

なぜ、コフナが誕生したのか? その原因は前記の”SADAJI農法”と同じ、土壌が”化学肥料・農薬漬け”になっていたからです。当時、フランスの農地は人工が入ることによって、土が本来 持っていた自然のメカニズムが壊されていました。そこで、パスツール研究所は考えたのは「復活のカギは”腐植“にあり」ということ。

腐植とは、”土の中の微生物により有機物が分解されたもの“です。「化学が土壌から追い払った微生物を取り戻そう」。そこから始まったのが有益な微生物探し。肥沃な土地や動物の腸内といったところから、糸状菌、細菌、放線菌などを採取、選別したのです。試行錯誤の結果 完成したコフナ。100種類以上の有益微生物と微生物が育つエサが入っています。

なので、土に入ったコフナの微生物たちは、コフナ自体と土壌にある有機物を分解するわけです。分解された有機物は養分として作物に吸収されます。一部 吸収されなかったものは腐植になり、そのうちに土と一緒になって粒となる。これが”団粒”です。団粒構造の土壌は、通気・通風性が良く、保水性にも優れ、微生物の活性も高めます。

コフナが最初に輸入されたのが1973年で、国産コフナが発売されたのが1982年。国産コフナはフランスコフナを日本で再発行させたもので、価格と使い勝手が日本向きになっています。

連作障害予防の効果が期待でき、作物が寒さにも暑さにも強くなるといわれているコフナ。いま、全世界40数カ国で普及しており、日本全国でも多くのファンを獲得しています。

まとめ

“有機農業”、”堆肥の施用”、”カバークロップ”、”リビングマルチ”、”草生栽培”など、”環境保全型農業”といわれるものはさまざまです。なかでも良く知られているのが”有機農業”。有機農業とは、「人工でない自然のモノを循環させて土壌を豊かにして、化学肥料や農薬に依存しないでも収穫が上がるような農業」です。

その主役になるのが”微生物”。それぞれの農法は、いろいろな微生物のなかから有用なものを探し出し、巧みに利用しています。微生物のサイズは比較的に大きい糸状菌で5~10ミクロン程度。10μはミリにすると0.01mmです。こんな目に見えないような小さな微生物は太古の昔から自然を循環させて、環境を保全するための大きなチカラになっているのです。

ただ、自然はゆっくりゆっくり流れています。有機農法もおなじようなペースです。化学肥料や農薬のような即効力はありません。どの有機農法を選んでも、”焦らず”、”怠らず”、”諦めない”ことが大切です。続けていれば、ジワジワではあるけれど、確実に効果は現れます。

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