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飲食店経営者が語る、農業に対する価値観やコロナで受けた影響 −cafe&bar green room オーナーインタビュー

長野県御代田町にあるcafe&bar green room (以下green room)は、神奈川県出身の和田耕太郎さん(以下和田さん)が始めたお店で、昼はカフェとして、夜はバーとして営業しています。
お店はいつも地元の常連客で賑わうといい、お洒落な外観・内装でありながらアットホームな雰囲気を味わえる素敵なお店です。
ハーモニカプレーヤーとして音楽活動をしつつ、green roomのマスターもしている和田さん。和田さんが長野へ移住するに至った経緯、そして飲食店経営者として新型コロナの時代をどう切り抜いて行ったかなどについて、今回のインタビューでお話を伺いました。
また、人との繋がりを大切にする和田さんが抱く、農業に対する価値観についてもお聞きしました。

ハーモニカプレーヤーでもある和田さん
目次

様々な職を経て、神奈川から長野への移住を決意 

ーー和田さんのご出身はどちらですか?

神奈川県の横浜です。生まれも育ちもずっと横浜でした。

ーーこのgreen roomを始める前はどんなお仕事をされていたんですか?

色々やっていました。音響の会社からスタートして、腰を壊して辞めて、その後トラックの運転手をやって免停になってクビになって。笑 その後は、設備屋さん、電気屋さん、ガス屋さん、水道屋さんの手伝いをしながら、港の仕事に就いてその後はセメントの工場で働いていました。

ーーすごいですね。(笑) それぞれのお仕事はご自身がやりたいと思って、次の仕事として選ばれたんですか?

そういう訳でもなく、音楽をやっているので、トラックの運転手なら誰にも文句を言われずに仕事中に練習できるかなと思ってやっていました。(笑)その後の仕事は、横浜でよく行っていたバーのお客さんに手伝ってよって呼ばれてやったりしていました。

ーー長野に来られてすぐにこのgreen roomを始められたのですか?

いえ、まずワイナリーで働き始めました。今年で7年目になります。

ーー今もワイナリーでのお仕事を続けられているということですか?

一応席があって、営業に出たりしないといけないんですけど、今はとてもそんな時間が取れないような状況です。アルカンヴィーニュ(長野県東御市にあるワイナリー)の立ち上げと同時に入りましたが、最初の一年は会社はあったけど建物がない状態だったので、ヴィラデスト(東御市にあるワイナリー)で一年手伝っていました。

移住に至った経緯

ーーなぜ長野に移住しようと思ったのですか?

色々な仕事をしてきて、もうお金はいいかなと思っていたんです。小さい頃から北軽井沢には結構来ていて、その時に使っていた家が古くなってきていたので、いつも2週間くらい休みを取って修理に行っていました。2週間過ごしているうちに、こっちで住むのもいいな、子育てをするにも都会よりいいのかもしれない、と考えるようになり、もう引っ越しちゃおうかなって思うようになりました。(住んでみて)ダメだったら戻ればいいやってわりと軽く考えていました。セメント工場はすごく円満退社で、いつでも帰ってきてねという感じだったので、5年やって自分の求めるものと違ってきてしまったら帰ってもいいかなと思っていました。でも住んでいるうちに全く帰る気が無くなってきてしまい、今に至ります。

ーーお住まいはずっと御代田だったんですか?

最初の2年は単身赴任状態でこっちに来ていたので、東御の会社の家に住みながら休みの度に土地を探し回っていました。

ーーそうして御代田を見つけられたんですか?

御代田は、音楽の演奏で長野にちょくちょく来ていた時のお客さんが御代田に住んでいて、泊めさせてもらったことがあるんです。最初は御代田なんて知らなかったし軽井沢の一部かなと思っていたら、軽井沢よりからっとした気候で住みやすいという話を聞いたので、御代田という手もあるなと思っていました。
そんなこともあって御代田をグルグル回っていたのですが、子供の学校を一番に考えて土地を決めようと思っていたので、学校を見に行ったんです。そしたら、こっちの人たちはみんなそうみたいですが、知らない俺に子どもたちが「こんにちは」と挨拶してくれて、すごくいい子たちだなと思ったんです。なのでここの土地は子育てにいいのかなと思い、御代田に決めました。

cafe&bar green roomの外観

新型コロナウイルスが飲食店にもたらした影響

そうして御代田に移り住み、green roomを始めることになった和田さん。美味しいご飯に美味しいお酒、そして雰囲気の良さもあり、地元民に愛される店としてここまで続けてこられました。
そんな中、今年上旬に新型コロナウイルスが流行。様々な事業が影響を被り、特に飲食店は外出自粛や緊急事態宣言を受け、客足が減って売り上げが大幅に落ちてしまったところが多くありました。
green roomでも、新型コロナウイルスの深刻さが増すにつれ徐々に客足が減っていったと言います。
コロナによって受けた影響やそれに伴って実施したクラウドファンディングについて、和田さんにお話を伺いました。

クラウドファンディングの活用

ーー新型コロナウイルスでこのgreen roomにはどんな影響がありましたか?

ここは基本的に観光客は来なくて、お客さんは地元の人が多いんです。ただやっぱり、緊急非常事態宣言が出る前くらいから客足が減ってきて、予約もキャンセルになったりしたのでテイクアウトを始めることにしました。その時に、聞かなければ良かったんですけど(笑)、一応確認として保健所にテイクアウトをしても大丈夫か聞いたんです。
そしたら、保健所の人が(キッチンが)狭すぎるからテイクアウトはやめてくださいねと言うんです。
でもこんな時期だし、何か救済措置があるのかと思いましたが、そういう事情も一切認めません、広げない限りダメです、と言われてしまいました。
テイクアウトをできるようにしないとやっていけないなと思っていたら、ちょうどお客さんがクラウドファンディングの話を持ってきてくれたんです。
通常だと手数料が取られるところを、コロナの影響を受けたところに関しては手数料が基本ゼロ、最後の振込手数料のみかかるとのことでした。
クラウドファンディング自体は、ワイナリーのワインアカデミーの授業内で扱っていたり、ワイナリー立ち上げの人が使っていたりでどういうものなのかは知っていましたが、やっぱり出資してもらう、言い方を変えればお金を貸してもらうことをあまりやりたくなくて、しばらく手を出していませんでした。
でもコロナ禍ではどうしようもないし、手数料がないのであれば、と思ってスタートしました。

ーーキッチンが狭すぎると衛生面上良くないからテイクアウトできないのでしょうか?

冷蔵庫のサイズが小さすぎたからだと思います。テイクアウトで使う食材などを保存しておかないと、食中毒が出てしまった時などに大変なので。改装前は、ビジネスホテルの冷蔵庫くらいの大きさの物を使っていたので、それが原因だったのかと思います。
お客さんが徐々に増えていた中で、動線も非常に悪かったので、いつかは(キッチンを)大きくしたいという話をずっとしていましたが、コロナで時間も確保できたので、お金もクラウドファンディングを通して集められるのであればちゃんと改装しようということで計画が始まりました。

最初は「割と無計画だった」と語る和田さんですが、クラウドファンディングが開始されるとTwitterやFacebookを通して支援が集まり、無事予定金額を達成するに至りました。SNSを通してお店の魅力を発信することの重要性が感じられます。

ーークラファンの返礼品などは和田さんと奥さんで全て決められたのですか?

そうですね、クラファンのホームページなどを作成してくれた人が、「猫の写真集が欲しいです、それ以外は考えてください」って言うので。(笑) なので2人でこれはやめようとかそれはやろうとか、色々案を出して返礼品を決めていきました。
実際にクラファンをやってみて、返礼品を発送する大変さがあるのと、あとパソコンが弱かったのでcsvファイルで出力した情報をまとめるのが大変と感じましたね。

好評だったワイナリー案内

大変な面もありましたが、返礼品のひとつとして出していたワイナリー案内が思いのほか好評で、クラウドファンディングで買わなかった人からもお願いされたりとかしたので、結構需要があるんだなと思いましたね。

新規就農者の畑を案内したりして、「この資材は普通だったら鉄を使うんだけど、ケチってこの木材にしているんです」とか(笑)、結構マニアックな情報を提供していました。あとはワイナリーの畑を見ながらそこの特徴や価格帯を説明しています。ツアーの最後にはアルカンヴィーニュでワインを試飲してもらっておしまいになります。このツアーで大体3時間くらいになりますね。行きたいと言う人が結構多いので、またどこかでやろうかなと思っています。

cafe & bar green roomの店内

こだわりは人との繋がり

ーー使っている食材でこだわっているものがあれば教えてください。

正直食材にはあまりこだわっていなくて、ただ人との繋がりを優先していて、パンは東御の友達がやっているクリシェのを使う、ソーセージは同じく友達がやっているソーセージハム男のを使う、って感じです。レタスに関しては、この近くで生産されているレタスを使っています。そこの農家の方とTwitterを通して知り合ったので、「レタスを買いたいんですけど売ってもらえますか?」と聞いたら配達までしてくれました。あとは近くにお客さんで農家の方がいるので、その人が何か収穫できたら持ってきてくれたりします。
昨日は元々の地主さんがししとうを持ってきてくれたり、きゅうりが取れたから食べてって持ってきてくれたり、わざわざ探すよりも人との繋がりで食材が入ってくる感じですね。
お店で提供するワインに関しても、基本的にはこの人の作り方はこうで、畑はこうで、と自分が説明できるものを並べるようにしています。そうすることで付加価値がついて、他のお店と同じ値段かもしれないけど、飲んでもらう価値はより上がるのかなと思っています。

ーーそうすることでお客さんも楽しめますよね。

農業の有り難みについて

ーー飲食店を経営することで食に携わっていると思いますが、そうなってから農業に対する価値観の変化みたいなのはありましたか?

キャベツの収穫のバイトやズッキーニ農家の手伝いとかに行っていて、実際に農家さんの話を聞きながらやっているので、野菜がどうやってできるのか、とか天候が悪かったり病気になるといかに大変なのか、などは知ることができました。

ーー携わることで大変さを知るのは、有り難みが分かるという点でも良いことですよね。

そうですね。ただ、ブロッコリーの最初の植え付けの時の農薬の話を聞くと、これ食うのか〜って思いますけどね。(笑) でも農薬を使わないとやっぱりまともな物はできないので、農業やっていない人が何も知らないで無農薬がどうとか言っていると、知りもしないのに言うんじゃないよ、やってみなよって思ったりしますね。農薬使わないで作っている友達もいるので無農薬の大変さも分かるし、大変ゆえにちょっとしか取れなくて結果価格も高くなることも分かります。
だから「高い」と言っても高いには理由があると思うんです。その辺もちゃんと分かってくるとあまり高く感じなくなるんですよね。飲食店として、無農薬野菜を提供したときに、そういったことをお客さんに説明できるかできないかも重要なのかなと思います。

飲食店経営者として考える農業について

ーー今後の日本の農業を支えていく上でできることって何があると思いますか。

やっぱり農業を知らないと、都会の人はその有り難みをあまり感じることができないと思うんですよね。私も都会に住んでいましたけど。(笑)長野のこの辺りの人たちに食べ物の大切さを教えれば、すぐ目の前で農業を見ることができるので分かると思うんですよ。
なので、都会の人にそういう部分をどう伝えていくか、ということだと思うんですよね。これから先食べ物というのはもっと重要になってくるはずなので。若い人だと最近移住してきて農業をやるっていう人が結構増えていると思いますが、それは多分ごく一部の人で、あまり興味のない人たちに向けてどう発信していくかを考える必要があると思うんですよね。
自分から興味を持つことってあまりないと思うので、例えばワイン好きだけど農業には興味ない人がいたとして、そういう人にはワイン用ブドウができるまでの過程を見せて、これも農業なんだよって発信したりとか。りんごジュースでも良いですけど、普段消費するものに農業を絡めて発信するのが良いのではないかとたまに話しているんですよね。
例えば俺は、狭いコミュニティーであるこのお店を通して、食べ物を提供するときにこれは誰々さんの野菜なんだよっていう発信をしています。
昨日うちのお店で扱っているレタスの農家さんが飲みにきてくれて、他のお客さんに紹介したら、じゃあ俺も買いたいっていう繋がりができてきたりしているので、狭いコミュニティーゆえにできる繋がりというのが、ここのお店できる発信かと思います。

今後の展望

ーー今後このgreen roomをどういう風にしていきたいですか?

あまり野望はありませんが。(笑)元々音楽ありきでスタートしたので、今はコロナなのでやりづらいですが、お酒と音楽を結び付けて楽しい空間を作れるようにしたいと思っています。
野菜の直売とか、外でできるイベントもしていければ良いなとは思っています。今は1人でお店をやっているのできついかもしれませんが、お客さんたちの中で手伝うよって言ってくれる人も結構いるので、ゆくゆくはできたらと思っています。
このお店を始めてからちょっとずつ、徒歩圏内に住んでいる人が夜来てくれるようになって、ホテルがここの近くのアパートを借りて従業員の寮にしたりしているので、若い子も結構来てくれるようになりました。若い女の子なんかは夜、ノーメイクでほぼ寝巻きでふらっと来てくれたりとかするので、そういう気軽さは絶対に無くさないようにしています。あまりお店感は出したくなくて、ない物はないとかそういうことが言える雰囲気は無くしたくないですね。

ーーお客さんとも良い関係が築けそうですね。

本当に良い関係が築けています。望んでいた形かなと思っています。

まとめ

今後チャレンジしたいことはなんですか?とお聞きすると、「日々疲れないようにすること」と答えた和田さん。
クラウドファンディングを実施してから通常のお店の業務に加え、返礼品の発送やワイナリー案内などを毎日こなしているため、寝る間も惜しんで仕事をされているそうです。
コロナの影響で今までとは違った営業スタイルを余儀なくされながらも、休むこともなく仕事をされている和田さんの姿は、コロナ禍で先行き不透明な中とても勇気をもらうことができました。
また、音楽活動や様々な職など、あらゆる経験をされてきた和田さんらしい価値観や今後の展望などをお聞きして、ますます今後のgreen roomの動向が楽しみになりました。

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