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農業の相棒『トラクター』

目次

トラクターの歴史

トラクターの元祖は、19世紀の中頃、イギリスで開発された蒸気式トラクターであるとされています。

19世紀後半から20世紀前半にかけて、ガソリンエンジンで動くトラクターがアメリカやイギリスで登場しましたが、なかなか普及するまでには至りませんでした。

そんななか、1910年代後半にこの状況を一変させたのがアメリカのフォード社です。1917年、流れ作業による大量生産でお手頃な価格を実現した“フォードソン・トラクターF型”が発売されました。

価格もさることながら、その操作性の良さも相まって、爆発的にヒット。アメリカ国内でフォードソン・トラクターは一気に普及しました。

1925年以降、急速な進化を遂げ、1930年代にはほぼ現在のカタチに

1920年代には、いろいろな国のメーカーがトラクターを生産するようになり、改良も進みます。

1925年からは、作業機を駆動させるための動力取り出し軸であるPTO(パワー・テイク・オフ)軸が登場。

その後、ディーゼルエンジンの搭載、空気タイヤの装着、作業機を取り付ける3点リンク機構が採用されるようになりました。

1930年代に、ほぼ現在のカタチになったトラクターは、時代とともに進化を遂げていきます。

エンジンの防振対策、前方視界の改善がされたり、転倒や転落の時に、運転者を守る安全フレーム“ROPS”も装備。さまざまな作業に適応するための多段変速や自動変速もごく一般的になりました。

トラクターの構造

エンジン

農作業の性質上、トラクターのエンジンは太いトルクのディーゼルエンジンとなっています。

フロントウェイト

トラクターは基本的に、後部に作業機が付きますので荷重が後方にかかります。前後のバランスが悪いと最悪の場合、転倒し大事故に繋がりますのでフロントウェイトをつけてバランスを保ちます。

3点ヒッチ

トラクターに作業機を取り付けるための装置です。

PTO(Power Take Off)

トラクターの動力を作業機に伝える部分です。

タイヤ・履帯


トラクターを使用する場所は、自動車が走る道路とは違い悪路が基本です。

そのために画像(左)のようなタイヤを使用します。

画像(右)「クローラ」と呼ばれるもので、湿地に強い仕様となっています。

トラクターができる仕事

トラクターは牽引車ですから、牽引される作業機を付け替えれば、主要な農作業を、ほぼ全てこなすことができます。

では、作業機別にご紹介していきます。

ロータリー

ロータリーは、「耕起」、つまり土を耕し平らにして、苗を植えやすく、種を播きやすくする作業機です。

ロータリーは「回転する」という意味があり、文字通り複数の“爪”を回して、畑や田んぼの土を細かく切り刻み、柔らかく空気を含む土にします。

“爪”には、いくつかの種類があります。一般的なものは“なた爪”で、“なた爪”に鋼を装着して耐摩耗性を高めた“ゼット爪”や、幅広で耐摩耗性に優れた“タイガー爪”などもありますが、選ぶ時は、農機屋さんに相談するといいでしょう。

当然ですが、“爪”は使い続けるとすり減ります。“爪”が摩耗すると、耕うん性能が低下し、燃費は悪くなり、機械に負担をかけてしまうので、様子を見て交換しましょう。“爪”の幅が2cmぐらいまでに減った時が、交換時期の目安です。

ドライブハロー

稲作で田植えをする前に、土を細かく砕き、かき混ぜて、田んぼの表面を平らにする作業、“代掻き=しろかき”に使う作業機です。

ロータリーより幅が広いので作業工率が高く、均一に平らにする均平板を備えています。“爪”は、雑草を土の中に埋め込むことができる、ロータリーより短い代掻き専門の爪です。

基本的には代掻き専用の作業機ですが、畑に種を播いた後、土をかぶせる作業に使う農家さんもいらっしゃいます。

ライムソワー

ライムソワーとは、肥料散布機の一種です。本来は、石灰やヨウリンなどの粉状の肥料を広範囲に撒くための機械でしたが、粒状の肥料用としても使われるようになりました。

構造は、ホッパーといわれる肥料箱と、肥料を均一にだすための攪拌(かくはん)装置(アジテーター)、繰り出し装置、トラクターへの取り付け装置からなっています。

このなかで、もっとも重要なパートは攪拌装置と繰り出し装置。ここでは羽根車かスクリューで肥料を押して、排出口から繰り出しますが、不具合があると均一に播けないことがあるので、点検には注意をはらうことが必要です。

ブームスプレーヤー

ブームスプレーヤーとは、農薬を散布する作業機です。広い畑や田んぼなどでの消毒や除草剤の散布に効率的です。

ブームと呼ばれる腕の長さ・タンクやポンプの大きさ・ノズルの種類など様々なものがあるので用途に合わせて使用します。

使うときに注意したいのは、

①ノズルに摩耗などの不具合があると、散布量が変わってしまうので作業の前にノズルをチェック。

②ホースがつぶれていたり、導管が変形したりすると、ノズルまでの圧力が下がって散布量が少なくなるので導線もチェック。

③作業後、ちゃんとした方法で洗い流さないと、薬害や残留基準超過を招きかねないので、正しく洗浄。洗浄後は真水が残るので、次回、作業を始めるとき、真水分を空散布します。

④ブームに残った薬剤をそのままにしておくと、ノズルづまりの原因になるので、ブームも必ず洗浄。

いずれにしても、薬物が相手なので、細心の注意が必要です。

マルチャー

マルチャーは、整形培土機にマルチを張る機能が付いた作業機です。

栽培する作物によって畝の高さが違います。マルチャーには平畝用と高畝用があるので、使い分けが必要です。高畝用は限界はありますが、平畝にもある程度対応できます。

マルチャーは、ロータリーの後ろに角パイプが付いているので、そこに取り付けます。

角パイプはほとんどのロータリーに付いていると思いますが、ない場合は、ロータリーを製造したメーカーのマルチャーを、ロータリー横のシャフトケースのフレームの穴に固定します。

フレールモア

フレールモアとは、草を細かく切り刻む草刈り機のことです。

休耕田や緑肥の細断だけでなく、りんごやぶどうなどの果樹園の下草刈り、アスパラやゴボウなどの茎葉処理にも使われます。

ハンマーナイフと言われる刃がついており、ロータリーの爪にように固定されているのではなく、1点を支点に振り子のように動く仕組みになっていて、遠心力で草をたたき切っている感じです。

これは、ロータリーは土を耕すことを前提にしているのに対して、フレールモアは石や木などの障害物があるところでも使われる可能性を考えた構造。

刃は固定されてなくフリーな状態なので、硬いものに当たったら跳ね返るだけなので、刃が折れたり曲がったりすることを防げます。

刃は両刃になっているので、切れ味が悪くなったら刃の向きを反対に取り付ければ切れ味は復活。両刃が切れなくなったら交換です。

フレールモアを使うときは、マルチ、ロープや縄などのヒモ状のモノ、刈った草などは、取り除きます。

でないと、マルチなどがハンマーナイフに絡みつくので、取り除くたいへん厄介な作業が発生します。

雪掻き

除雪機は、雪が降る地方ではなくてはならない作業機です。道路や農道を除雪したり、農作業の妨げとなる雪を取り除くために使用します。

トラクターは基本的に4輪駆動なので、雪のなかでも動けますが、雪の量や質によってはチェーン装着が必要な場合もありますので、チェーンを用意するのが無難です。

トラクターの未来

機能・性能ともに完璧に近くなったと思われるトラクターですが、まだまだ進化は止まりません。

自動車の世界で開発が進んでいる“自動運転”が、トラクターにも導入され普及しつつあるのです。

GPS(全地球測位システム)を利用した、人間が乗らずに農作業を行うロボット・トラクターです。タブレット端末などで、トラクターをコントロールできます。

エンジンコントロールも、作業状況にあわせてエンジン回転数や速度を自動調整することも可能です。

もちろん、前方のヒトや障害物を察知しての自動停止。搭載されたカメラで、トラクター周辺をモニターすることもできます。

大規模農場などでは、有人のトラクターで無人トラクターを監視しながら2台いっしょに農作業。こんな風景が普通に見られる時代は、すぐそこまで来ています。

以上、トラクターの歴史と近未来。トラクターのできる仕事をご紹介してきました。トラクターは、農業には欠かせない万能な農業機械。長い歴史と将来さらに進化する可能性があることをおわかりいただけたでしょうか。

筆者も、トラクターファンとして今後の進化と新しい未来を楽しみにしています。

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