【東日本大震災から10年】被災地の農業再生の今
こんにちは、ツチカウ編集部の恩田です。
2011年3月11日。三陸沖を震源とする、マグニチュード9.0の東日本大震災が発生しました。 地震により、多くの人が犠牲になると共に、農業にも甚大な被害が発生しました。
あの日から10年が経過しました。
今回、ツチカウ編集部は、被災地の農業被害と共に、再生の現状についてお伝えします。
東日本大震災 甚大な被害からの復興
農林水産省の統計によると、東日本大震災による農業関係の被害総額は約9,049億円となっています。農地の損壊が約5割、農業用施設の損壊が約4割です。農地では亀裂や陥没の被害が多く報告されました。
政府は平成23(2011)年7月に策定した「東日本大震災からの復興基本方針」において、震災後から10年の復興の目安を定めました。
津波により被災した青森県、岩手県、福島県、宮城県、茨城県、千葉県の農地は計2万1,480haで、公共用地への転用を除いた「復旧対象農地」1万9,760haについては、除塩作業が進められてきました。
具体的な復旧状況としては、令和2(2020)年1月末時点で農地は93%、農地海岸と農業集落排水施設は98%、 主要な排水機場に至っては100% が完了となっています。
岩手県、宮城県、福島県においては、復興交付金を活用して農地の大区画化に取り組むなど、農業の経営拡大を目指す農家もいます。
震災に負けず事業拡大 「株式会社舞台ファーム」
「株式会社舞台ファーム」 (宮城県仙台市若林区日辺字田中11番地 )は、米や野菜の生産・加工・販売を一体的に手がけ、農業の六次産業に取り組んでいます。具体的には、大手コンビニ向けの生食用カット野菜の展開や、自社物流による年中無休の配送網の運営など、農家と企業の連携を担っています。
東日本大震災では、津波により、倉庫に備蓄していた米が流出するなど、甚大な被害が発生しましたが、残っていた食材で3日間、約22,000食以上の炊き出しを行いました。六次産業に取り組む企業として、震災時にも食材の加工・提供ができたことで、被災をした多くの方々の支えとなりました。
社長の針生信夫さんは、「世界に発信できるようなメード・イン・東北を作る」と話しています。早くも、震災から2年後の2013年には、宮城県仙台市に大型水耕栽培施設「株式会社みちさき」を設立し、その翌年には日本最大級の精米工場「舞台アグリイノベーション亘理精米工場」などを竣工しました。
そして2020年には、宮城県美里町と太陽光利用型の水耕栽培設備の立地協定を締結し、今年の6月には本格運営を予定しています。被災地、東北の復興を目指し、株式会社舞台ファームは、農業の新しい分野に挑戦し続けています。
参考:東北の地から夢を描く、情報テクノロジーによる農業の未来~舞台ファーム 代表取締役 針生信夫氏
参考:太陽光型自動水耕でレタス栽培 宮城・美里で国内最大級プラントの地鎮祭
がんばろう東北! いつか新鮮な野菜を全国へ
冠水した農地を利用可能な状態に戻すには、土砂やがれきを取り除いた後、真水を流して海水の塩分を除去する必要があり、全工程には約10年という長い年月がかかります。震災から今年で10年が経過しましたが、まだ完全に復旧できていない農地もあります。
震災は農業にも大きな被害をもたらしました。ですが、未来を見据え一歩一歩、農業再生を目指す農業者がいます。被災地がいつか完全に復興し、全国に新鮮な野菜が流通する日が来ることを願っています。