お酒を至高にする枝豆(エダマメ)栽培|育て方のポイントから栽培手順まで
夏場のビールの傍ら、ほどよい塩気と彩りを担ってくれる定番のアテ・枝豆。
お酒の食文化や日本食ブームの火付け役でもある枝豆は、風味や食べ方のシンプルさが人気の秘訣です。
が、枝豆本来の甘さや新鮮さをしっかり味わえる機会は意外にも限られているもの。
もしもあなたが自家栽培にチャレンジできるのなら、鮮度がカギである枝豆を真に堪能したことになるかもしれません。
そこで本日は、枝豆(エダマメ)栽培の特集記事をお届けします。育て方はプランター栽培などの小規模菜園を想定しているため、ちょうどいい量の採れたて枝豆を堪能することができますよ。
ご存じ?枝豆(エダマメ)のまめ知識
大豆・茶豆・黒豆との関係性
枝豆は、大豆が成熟する前段階を指した呼び名です。大豆が緑色を帯びている未熟な状態で収穫したものを、枝豆と呼んでいます。
そもそも大豆は色や大きさなどの違いから、数百種類もの品種に分けられています。大豆には「大いなる豆」や「大切な豆」という抽象的な意味合いがあって、どれか1種類を選んで付けられた名称ではありません。大豆はいわば、数ある豆類をひっくるめた、大きな世帯主のような立ち位置なのです。
色味の違いから、大豆には一番生産量の多い黄大豆、茶大豆、黒大豆などがあり、完熟していない枝豆にもさまざまな種類があります。
中でも丹波篠山産の黒枝豆や、山形特産品の白山だだちゃ豆、新潟県産の黒崎茶豆、群馬県産の天狗印枝豆などが著名。
これらもすべて、黒大豆や茶大豆などの大豆の若き姿として、独特な風味と高い栄養価を誇るに至っています。
枝豆(エダマメ)の起源と食文化
未成熟な大豆を食べる文化が日本に根付いたのは、およそ平安時代のことと考えられています。
大陸から水稲とともに大豆も伝わり、やがて未熟な枝付きのまま食用にしたことで“枝付き豆=枝豆”が生まれました。
しだいに仏教による肉食の禁止が広まったことで、大豆は貴重なタンパク源や栄養食として扱われたのだそう。江戸時代頃には、枝豆が庶民生活にも浸透し、枝豆売りの商人の存在や、食べ歩きが行われていた事実が文献に残されています。
そして近年、枝豆の人気はアジア諸国に留まることなく「EDAMAME」として和食ブームを牽引するほどになっています。
豆と野菜の両性を兼ねるように、タンパク質やビタミンB1、食物繊維、鉄分などを多分に含む枝豆。健康志向や食の多様化にも応えうる、グローバルな食材として大きなポテンシャルを秘めています。
枝豆(エダマメ)栽培の特徴とポイント
栽培期間
エダマメにはそれぞれ、4~5月に種まきをする極早生種や早生種、5~6月に蒔く中生種、6~7月の作型の晩生種があり、幾通りかのスケジュールを組むことが可能です。
発芽適温が25~30度、生育適温は20~25度と、寒さを不得手とし温暖な気候を好むのが特徴。
早春の種まきは地温15度以上が必須で、気温は10度を下がると発芽不良のおそれがあります。
一方、晩成種の場合は早くに播種してしまうと、茎葉のみが生い茂ってサヤの付きが悪くなるのでご注意を。
作物の特性
日当たりと風通しの良い環境下で旺盛に育ち、直射日光にも強い性質を持っています。
乾燥が苦手で、盛夏は特に水切れしやすいため、土表面が乾かないようたっぷりと水やりをしてください。
栽培の手間はあまり掛からず初心者向きですが、種まきから収穫までおよそ80~90日間とやや長期に渡ります。
エダマメは発芽後、鳥による食害が多くなりがちで、特に昆虫類の少ない4月頃までは要警戒。
種を蒔いたら不燃布のシートや防虫ネットですぐに覆うか、5月以降に苗木を植え付ける方法がおすすめです。発芽からしばらくの間は、半分に切ったペットボトルをバリケードのように被せるやり方でも、新芽を守ることができます。
なお、プランター栽培の場合は鳥害をあまり問題視する必要はありません。
肥料はいらない?
エダマメなどの豆類は、肥料過多になると株は立派に育ちますが、肝心の実が未成熟となる傾向にあります。
というのも、マメ科植物は土の中の根粒菌が根に寄生しやすく、両者は互いに栄養を分け合って生きていけるからです。
根粒菌は根を介して植物に窒素を放出し、植物は光合成で得た養分を対価として分け与えます。
多数の根粒菌が住み着いている根には小さなこぶがいくつも出来ており、植物は窒素成分が足りている証となります。そのため、エダマメは生育初期を除いて、一般的な施肥を必要とはしていません。
例外として、茎葉の勢いが著しく悪い場合にのみ追肥を行うようにしましょう。
枝豆(エダマメ)の育て方の手順
土づくり
エダマメ栽培には、水持ちや通気性が良く、団粒構造を成している土が理想です。pH値(好適土壌酸度)では6.0~6.5と、弱酸性の用土が適正となります。
プランター栽培には市販の野菜用培養土を使っても構いませんが、自分で配合する場合は、赤玉土6:腐葉土3:バーミキュライト1の割合で混ぜ込みましょう。
地植えでは、栽培の2週間以上前に苦土石灰を、その1週間後に堆肥と化成肥料を混ぜてよく耕したのち、高さ10~15cmほどの畝を作っておきます。
播種
プランター栽培では、15cm間隔で深さ1cm程度の穴を空けたら、1箇所につき2~3粒の種を蒔いて平らになるよう覆土しましょう。
畑に直播きする場合は、株間を20~30cmほど取り、1穴につき3~4粒を種まきします。本葉が2枚程度生える前に1~2本に間引きし、生育の良いものを残してください。
育苗と植え付け
エダマメには、種から育てる方法と苗木を定植する方法があります。苗を育てて植え付けると、発芽するまで鳥害を避けやすいのがメリットです。
育苗の仕方としては、直径9cmのポットに用土を入れ、深さ2cmほどの蒔き穴を3~4箇所空けて1粒ずつ種を入れます。土を優しく被せてから平らに軽く整え、防虫ネットを掛けたら日当たりの良い場所に置いておきましょう。
発芽後、初生葉(双葉が開いた後に出てくる葉)が展開したら1~2本になるよう間引きし、約20~25日間育てます。本葉が1~2枚になった頃が定植適期であり、畑に植え付けたら株元にたっぷりの水を与えてください。
栽培管理
本葉が5枚程度生えてきたら、株元に周囲の土を寄せ集める作業・土寄せを行いましょう。
土寄せには株のふらつきを抑え、雑草が生えるのを防ぐなどのメリットがあります。間引きのタイミングや草丈が30cm以上になった頃にも、同じように作業を繰り返すと効果的です。
加えて本葉が5~6枚になる同じ頃に摘芯し、草丈を低くして倒伏に備えておきましょう。5節目を目安に摘芯しておくと、わき芽が伸びて側枝にも実がつき収穫量がアップします。
収穫
開花期から収穫期にかけては、根が乾燥しないように灌水をしっかり行いましょう。収穫が近づくにつれて灌水量を多くすることで、実が立派になっていきます。
エダマメの収穫適期は、7月下旬~8月の間。
さやの大部分が膨らんで濃い緑色になり、株の上側に未成熟な実がわずかに成る頃です。さやを指で軽く押さえると、中の豆が飛び出すようになったら頃合いで、時期を逃すと実が硬くなってしまいます。
エダマメを収穫する際は、子実を1つ1つハサミで切り取るか、株ごと一気に引き抜くようにしてください。
獲れたての枝豆(エダマメ)と格別な夏を
エダマメは鳥や虫による食害のほか、乾燥状態にさえ注意しておけば、栽培は楽しいイベントになります。中でもプランター栽培は手間暇が軽減できるため、家庭菜園ビギナー向き。
栽培期間が比較的長いエダマメだからこそ、新鮮な旨味を味わえる喜びもひとしおです。
ぜひ自家製のエダマメを夏の食卓に並べられるよう、種まきの段階から作業を楽しんでみてください。