病害虫に悩まされない自然農薬の作り方
映画「風の谷のナウシカ」は、森や虫たちと、人間同士の攻防を描いた作品です。人間は文明勃興のために腐海を焼き払おうとしますが、その度に巨大な蟲たちの反撃にあうなど、自然との闘いが表のテーマとなっています。本記事もまた、小さな自然とどのように向き合うのかを根底に、「自家製農薬」という選択肢を取り上げるものとします。
家庭菜園で市販の農薬を使うことに抵抗があり、よりシンプルな形で病害虫の問題を解決したい場合に参考にしてください。
植物の病気はなぜ起こり、いずれの自然農薬がどのような虫の害に効くのか?
本質的な問いから、とっておきの自然農薬の作り方まで、まとめてお見せしていきます。
植物はなぜ病害虫に侵されてしまうのか?
農業や家庭菜園では数多くの困難に直面しますが、表面的な問題を解決してくれるのが農薬であり、化学薬品の最大の手柄といえます。
が、そうすると病害虫の発生要因にはフタをしたまま、対処療法のように薬剤をも強化しなければならなくなる傾向にあります。
そもそも、植物の病気や虫の被害はなぜ発生するのでしょうか?
理由①肥料のやりすぎが病害虫の発生を助長する
肥料に含まれる窒素は、植物のタンパク質合成に欠かせない成分です。
しかしながら、植物が窒素を過剰に吸収すると、根が傷つくために病害菌の侵入を許してしまうほか、栄養バランスの乱れや代謝異常が起こりやすくなることが知られています。
人間もまた、アレルギーなどの原因の一つがタンパク質の過剰摂取にあるといわれているのは興味深い共通点です。
たとえば人間の腸が植物の根に該当するのなら、“肥料(窒素)過多=食べすぎ”が病気を誘発すると考えられそうです。
なお、窒素を余剰に吸い上げて育った野菜は濃い緑色をしていますが、自然本来の植物は雑草などのように淡い緑色をしているのが基本となります。
理由②土壌条件が植物の健康に反している
山に自生する植物は庭のそれと違い、病害虫の被害を受けにくいことが知られています。
その理由はいまだ研究段階ですが、山では多様な植生が見られることと、病害虫が蔓延しないような独自の生態系を築いていることが考えられます。
また山の土は柔らかく、土の中を掘っても温度がほとんど変わらないことが、植物の根を力強くさせ免疫性を高めている可能性があります。
それに比べて、多くの栽培地での土壌は固く、地中にいくほど冷たくなり、化学薬剤の影響でいっそう根に負担が掛かっている状況です。
土壌の温度や湿度、pHの条件が上向くことで、病害虫を抑制できるとする見方があります。
自然農薬とは天然素材を原料とする防除エキス
自然農薬とは化学合成した薬剤ではなく、自然の成分を用いた農薬の代用品です。
たとえば、人体にやさしいとされるヨモギやドクダミなどの植物ハーブエキス、重曹、木酢液などが当てはまります。
多くは身の回りの物を材料とし、経験と工夫によって効能が明らかにされてきました。
また、日本料理や漢方の概念である「隠し味」的な意味を持ち、少量を散布することで植物の健康増進に役立てることも可能です。
食の安全性の観点から、化学農薬と併用する使い方や、土壌中の微生物を活性化する方法などが研究されています。
自然農薬のメリット&デメリット
はじめに自然農薬の利点は、
- 長期間使用することによる体や環境への負荷が小さい
- 化学農薬に比べて栄養価が高く、味の濃い作物が収穫できやすい
- 抵抗性や免疫性を持った害虫が付きにくくなる
- 病原菌の活動を抑える菌類が増え、病気の予防に繋がる
などが挙げられます。
反対に、欠点となるのは次のような事柄です。
- 化学農薬のような即効性がない
- 自然農薬を謳う市販品であっても毒性が強い場合がある
- 規定量が決まっていないため状況によって量を調節したり、他の自然農薬と混ぜて散布したりと工夫が必要になる
- 植物によっては散布後に異常が起こるおそれがある
自然農薬の種類と効果
ここでは、一般的な自然農薬の例と期待される効果、使い方を列挙します。
病気抑制と予防
重曹水[効果:うどんこ病、さび病、灰色かび病、殺菌、消毒]
アルカリ性の重曹は、弱酸性の環境下で発生しやすいカビを死滅させる効果があります。
うどんこ病やさび病、灰色かび病は、カビの一種である糸状菌によって植物の葉が白くなる病気です。
重曹を500~1,000倍に希釈して病斑や葉裏に噴射すると、症状を抑えることができるといわれています。
米酢[効果:うどんこ病、根の活力・耐病性向上、害虫忌避、抗菌]
酢の主成分である酢酸には強力な殺菌作用があることから、重曹などとともに特定農薬に指定されています。
特定農薬とは、安全性が保障されている上に、防除効果が認められている自然素材のことです。
うどんこ病の早期対策として、水で10~50倍に希釈したものを株全体に噴き掛けます。
効果を持続させるため、ニンニクや唐辛子、石鹸を加えて散布する手法もあります。
木酢液&竹酢液[効果:土壌改良、発育促進、病気予防、防腐、消臭]
木酢液は木炭を、竹酢液は竹炭を焼く過程で作られる蒸留液です。
これらを散布すると病害虫が減る上に、土壌内の有用菌が活性化して植物の成育が良くなります。
商品の説明書きに従って希釈し、使用する際はマスクや手袋を着用します。
害虫忌避
牛乳[効果:アブラムシ、アリ、ダニ]
牛乳を噴霧すると虫の体に皮膜が形成され、膜が収縮していく過程でしだいに窒息死します。
葉が乾燥している晴れた日の朝に行いますが、牛乳の成分が残らないように後ほど洗い流しておく必要があります。
アセビ液[効果:アブラムシ、アオムシ、ヨトウムシ、ネキリムシ、ハダニ]
ツツジ科のアセビには、グラヤノトキシンなどの強い有毒成分があり、古くから虫害の軽減に利用されてきました。
使い方は、熱湯1リットルにアセビの葉をひと掴み入れ、抽出した成分をスプレーで株一帯に噴霧します。
なお石鹸を少量混ぜておくと粘りが出て、葉面や害虫に付着しやすくなります。
コーヒー[効果:ハダニ、アリ、センチュウ、ヨトウムシ]
濃いめに入れたコーヒーを散布すると虫の体に皮膜ができ、その膜が乾燥によって収縮する過程で窒息死に至ります。
コーヒーを入れた後のカスを株の周辺に蒔くことでも、防虫効果が期待できます。
自然農薬を自分でアレンジして作ってみよう!
自然農薬は作り方・使い方によって、次の6種類に分けることができます。
- 原液を散布する方法
- 水で希釈して霧吹きする方法
- 材料を乾燥させてすり潰す方法
- 材料を煮て抽出する方法
- 酢やアルコールなどに材料を漬け込む方法
- 材料を掛け合わせる方法
このうち、⑥の方法で作る自然農薬「香辛料入りストチュウエキス」を紹介します。
[用意するもの]
- 酢…150ml
- 焼酎…150ml
- 木酢液か竹酢液…150ml
- 赤唐辛子…ひと握り
- ニンニク…3~4片
- タバスコ…数滴
- 500mlのペットボトル容器
- お茶パックかコーヒーフィルター
[作り方と使い方]
- ニンニクはすりおろし、唐辛子は細かく刻んでから材料を全部混ぜ合わせる。
- 空のペットボトルに、お茶パックかコーヒーフィルターでろ過した①を入れる。
- ペットボトル内の原液を100~500倍に薄め、スプレーで葉面や害虫に散布する。
後記
「風の谷のナウシカ」の物語は、忌むべき腐海や蟲たちこそが浄化装置であり、本当に汚染されているのは世界そのものだということにテーマの真髄があります。
が、それ以上に“表面的な問題しか見ていないため本質に気づかない人間”を皮肉っているのが印象的です。
ゆっくりとしたリズムで調和を図ろうとする自然と、性急に物事を形作ろうとする人間。
この差がいつまでも平行線である限り、植物の病害虫に悩まない日はもうやって来ないのかもしれません。
自家製農薬を用いる際にも、諦めずに自然を理解しようとする目利きの能力が求められています。
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