これからの農家のあり方を考える〜半農半宿の暮らし〜
2021年9月1日
お茶といえば静岡が有名ですが、実は鹿児島県南九州市は、市町村別でその生産量日本一を誇る、知る人ぞ知る“お茶どころ”なのです。
年間を通じて温暖な気候に恵まれ、一面にグリーンのお茶畑が広がるのどかな田舎町。
今回は、そんな南九州市の南部に位置する頴娃(えい)町で、古民家を改修した「暮らしの宿 福のや、」の経営と、家業であるトウモロコシの専業農家にも携わる、まさに半農半宿の取り組みについてご紹介。観光のチカラで農業を盛り上げる画期的なプログラムも行われており、これからの農業経営を考えるヒントがあちらこちらにちりばめられています。
目次
「農」を利用した様々な取り組み
鹿児島市から車でおよそ1時間。 東シナ海をのぞみ、一面にお茶畑が広がる頴娃町では、農業と観光の連携を基軸にした「まちづくり活動」が地域総出で行われ、近年注目されています。 人々の多くは、農を中心としたまさに晴耕雨読の日々。今回ご紹介する「暮らしの宿 福のや、」を経営される瀬川知香さんも、そんな暮らしに憧れて移住をされた一人です。 “頴娃を暮らすように旅する”をコンセプトに、田舎のおばあちゃんちに帰ってきたようなこちらのお宿は、1棟丸ごと貸切で提供。近所の採れたて野菜や魚介類を使って自炊をするもよし、地元の飲食店で名物を堪能するもよし、と気ままに地元グルメが満喫できるのも素泊まりだからこそ。 また、もう一つの自慢は町全体に点在する昔ながらの農風景。大地の営みは人知を超えた圧巻の美しさを放ち、癒される旅人が続出です。“頴娃に暮らす人たちが感じる幸せを、ダイレクトに感じていただきたい”、そんな瀬川さんの思いがそのままカタチになったお宿なのです。農家を五感で丸ごと楽しむ
2021年1月には、茶畑に囲まれた絶好のロケーションのなか、農産物の加工場を兼ねたカフェ「茶や、」もオープンしました。旬の果物や野菜を使った地産地消のメニューがいただけるだけでなく、工房見学やショッピング、またレンタルスペースや民泊体験もOK。イベント開催などもあり、見て触れて味わいながら、五感で農家を丸ごと楽しむ仕掛けが満載です。 またこの秋には、「茶や、」が農家民宿としても新たにスタートするそうですが、農業を切り口にしたこうした取り組みは、地元の協力があってこそ。まちの日常が観光資源として生かされる好機となりそうです。農業の感動や可能性を夫婦で共有
一方で瀬川さんは、農家の嫁としての顔もあわせもち、栽培だけでなくお菓子などへの加工製造から商品パッケージまで自社農園で行っています。年間を通じて育てているのは、スイートコーンや西洋ニンジンなど。 夫である祐星さんは、トウモロコシの魅力に惹かれお茶農家から転身。おいしくて安全なものをお届けしたいと、土や肥料はもとより減農薬へのこだわりや、作物が必要とする微量な要素にまで注目するなど日々研究に励んでいます。 そんな農業人である夫と、その収穫物をPRし商品化を手がける妻。農業を通じて得られる感動や楽しみを二人で共有できるからこそ、その可能性も無限大に広がっています。風土にあわせて無理なく暮らす
地方のとりわけ田舎町は、とかく「なにもない」と表現されがちですが、風光明美なこの地には自然の恩恵があふれ、実のところ都会に比べて贅沢とさえいえるかもしれません。大切なのは、その土地と足並みを揃えた無理のない暮らし。環境にあった仕事をつくる、そんな理想的な日常は、遠いようで実はとても近くにあるようです。 さらに詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。- 暮らしの宿 福のや、
- 大野岳の麓 茶や、
- 頴娃のお福分け