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始めよう”環境保全型農業”。 Part.2

“環境保全型農業”でも、動物を利用する農法と化学肥料も使う農法。

“環境保全型農業”。前回は、微生物を媒介する有機農法の代表的な農法をご紹介しました。でも、有機農法に微生物が登場するのは、当たり前といえば当たり前。ほとんどの農法がなにかしらのカタチで微生物を利用しています。逆に、積極的に微生物を介在させない農法は珍しいカンジです。そこで、今回は微生物があまり関係しない”環境保全型農業”を取り上げたいと思います。

アイガモは、口も足も、お尻も使って”環境保全型農業”を実践する。

アイガモ農法は、よくマスコミなので紹介されるのでご存じの方は多いはずです。アイガモを田んぼに放てば、雑草や害虫をエサとして食べてくれる。口に入ったものは消化され糞として排出されて養分になる。泳ぐことで土をかき混ぜてくれるので、稲が刺激され肥料の吸収が良くなる。ビジュアル的にも、見たヒトに農薬などを使っていないという安心感が生まれる。そして、田んぼの上での仕事が終われば食卓に上る。いいとこずくめの農法です。

しかし、デメリットがないわけではありません。アイガモ農法では、生まれたてのヒナが放たれますが、それはなぜか? 大きくなると稲穂を食べてしまうからです。稲穂が垂れる前には食肉用として処分されてしまいます。ということは、働いている時は小さい状態。トビやイタチなどに狙われてしまいます。アイガモ自体が逃げるのも心配です。なので、防鳥網や柵をつくって囲まなくてはいけません。それと、田んぼに出るまでの飼育期間にお金がかかる。しかも、アイガモは田んぼの自然のエサだけでは栄養が足らなくなるので、補助のエサが必要。アイガモ農法は、意外に費用と手間暇がかかるのです。

ただ、”安心・安全なアイガモ農法のお米”ということで、他との背別化が図れるし、食肉としてのアイガモの利益も望めるので、続けている農家は少なくありません。

鯉が仕事をしてくれる”鯉農法”。”アイガモ農法”とのカブリ作戦もあり。

アイガモ農法とまったくコンセプトが同じなのが”鯉農法“です。雑草や害虫を食べて駆除してくれる。泳いで土をかき混ぜるので養分や酸素が稲に良く吸収される。仕事が終わる収穫時期には食用になる。糞が肥料になるほど量があるかは疑問だけど、多少の足しにはなるでしょう。メリットはほとんどアイガモ農法といっしょです。

違うのは、アイガモ農法は放し飼いする時期を選ぶが、鯉農法は自由ということ。田植え直後の苗はアイガモに食べられる大きさです。しっかりと根が張り幹がしっかりするまで、アイガモは田んぼに入れられません。収穫時期も同様です。稲穂が垂れる前に、アイガモは退場してもらわなければなりません。鯉なら、苗が小さくても穂が出ても食べることはできないのです。加えて、手間暇。天敵が多いアイガモは、夜になれば小屋などで保護しなければなりません。その点、鯉は入れっぱなしで大丈夫。エサも与える必要はありません。

でも、鯉農法はアイガモ農法よりもあまり有名ではないし、やってる農家も少ないカンジ。と思ったら、”アイガモ+鯉”という方法があるじゃないか。実際、併用しているケースはよくあります。ただ、この作戦だと鯉が稚魚の場合は、アイガモにも成魚の鯉にも食べられてしまう。稚魚は大きくなるまで別の場所で育てたほうが良さそうです。

作物に厳しい永田農法。たぶん日本でいちばん有名な”環境保全型農業”。

最後は、微生物とか動物とかはまったく縁のない農法。でも、”環境保全型農業”としてはもっとも有名かもしれない農法です。”永田農法“。知っている方はかなり多いと思います。永田農法は、作物に必要な水と肥料をギリギリの量を与えて育てるので、”スパルタ農法“とか”断食農法“とかとも呼ばれる農法。創始者は永田輝喜治(ながた てるきち)さんです。

永田さんは、大学卒業後、故郷の熊本県 天草で実家の農業に携わることになりました。その時、経験したミカン栽培が永田農法のルーツです。ほとんど肥料分のない石が混ざった土に、人糞を発酵させ水で薄めた肥料を施したら、甘く濃い味のミカンができた。そのことをヒントに試行錯誤の結果、永田農業は確立しました。

永田農法の特徴は、①土はできるだけ痩せたもの。②与えるのは水で薄めた液体肥料で、1週間に1度あげる。ほかにも、苗で植える場合、根は洗って切って植えるなど細かいワザもありますが、 基本はこの2点です。水と肥料を必要最低限にすることで、作物を飢餓状態にする。そうすれば、作物が本来持っている生命力を発揮して、糖分や米養分をたっぷり蓄えるようになるそうです。ただ、カンタンそうな農法だけど、理想的な結果を出すにはある程度の経験が必要。このでも、 “焦らず”、”怠らず”、”諦めず”を心がけることが鉄則です。

まとめ

とくに稲作に使われる、”アイガモ農法”と”鯉農法”。動物が雑草を食べてくれて、糞は肥料になり、土も拡散してくれるとても理想的な “環境保全型農業” だと思います。ただ、当然ですが、水田以外の場所で活用することは不可能です。耕作放棄地などでは除草にヤギが使われていますが、 作物を育てている畑では放てません。畑で活躍してくれる動物がいればおもしろいですけどね。

永田農法は、有機農法であまり登場しない液体の化学肥料を使いますが、環境に優しい方法だと言っています。なぜならば、肥料が有機か無機かはあまり関係なく、畑に肥料がいっぱい残ってしまうのが環境には問題だということです。植物は与えれてた肥料が固形だと一部しか吸収できず、余った栄養分は畑に残留してしまいます。そして、余剰な栄養分は雨が降れば 河川に流れていき、湖などを含めて汚染する。その点、 永田農法はどうでしょう。撒いた肥料は必要最低限の量でしかも吸収しやすい液体なので作物が全部 取り込んでくれる。なので、土に栄養分は留まらないから、河川や湖に流れ込まない。だから、環境保全になっている。確かに、理にかなっていますね。

これまで、さまざまな “環境保全型農業” を紹介してきましたが、永田農法から見えてきたことがひとつ。キーワードは、「化学肥料」でも「農薬」でもない、「過剰」というコトバです。日本の土壌は、有機・無機に関係なく肥料を必要量以上に与えすぎたので肥料過多になっている。これでは微生物も生きられないし、余った栄養分は河川に流れていって汚染する。農薬にしても「過剰」に投与するので、人間と自然に害を及ぼしてしまいます。これが、日本の在来農法が残してきた負のスパイラル。やはり、なにごとも「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」なのです。

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