肥料代高騰の救世主?下水汚泥肥料とはなにか、その活用法
こんにちは、ノウキナビ事務局です。
昨今の世界情勢の関係などから、肥料代の高騰が続いていますね。ノウキナビをご覧の農家さんたちにも、影響があることかと思います。
ところで、「下水汚泥肥料」「汚泥発酵肥料」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
言葉の通り、「下水道に流れた生活排水などの下水処理課程で生じた汚泥」から作られる肥料のことです。ちょっと、文字から想像するとネガティブなイメージがあるかもしれませんが、実は今この「下水汚泥肥料」が、とても注目を浴びているんです。
今まで下水汚泥肥料について「食わず嫌い」だった人も、ぜひこれを機に下水汚泥肥料の活用について考えてみてはいかがでしょうか。この記事では、「知っているようで知らなかった下水汚泥肥料の実際」についてご紹介いたします。
下水汚泥肥料とは
下水汚泥肥料とは、下水処理過程で生じる汚泥を乾燥や消毒などの処理を施し、土壌改良材や肥料として利用できるようにしたものです。下水汚泥は、家庭や工場などからの排水が集められた後、水質を浄化するために行われる下水処理工程で発生します。この処理によって、有機物や栄養素が豊富な固形物が分離され、それが汚泥として収集されます。
下水汚泥を肥料として再利用することは、廃棄物の量を減らし、資源を再利用するという点で環境に優しい取り組みです。
化成肥料の多くを海外輸入に頼っている日本において、下水汚泥肥料の活用は、自国の食料安全確保をするうえでも注目を浴びる取り組みとなっています。国土交通省でも、「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」と称して、今後の普及に向けて検討を進めています。
下水汚泥肥料のメリット
下水汚泥肥料には様々なメリットがあります。
まずは、前述した通り「資源を再生・リサイクル」していること。廃棄物を減らし、また下水汚泥に含まれる有機物や栄養素が再利用されることは、今後の持続可能な世の中には必要な要素ではないでしょうか。
また、「土壌改良」のメリットもあります。下水汚泥に含まれる有機物が土壌に添加されることで、土壌の構造が改善され、保水性や通気性が向上します。これは作物の成長に有利になりますよね。
そして、「経済性の良さ」もあります。従来、下水汚泥は焼却などの方法を取り処分されていました。しかし、焼却による汚泥の処分は燃料コストも高く、処理に費用がかかります。その代替手段として生まれた「肥料化による処分」が、下水汚泥肥料です。そのため、ほとんどの下水汚泥肥料の製造元(下水処理場など)は、かなり低額で下水汚泥肥料を販売しています。彼らにとっては、焼却処分するよりは低額でも販売できたほうが処分コストが下がり嬉しいのです。
エコ・土壌改良・低コストと三拍子揃った素晴らしい肥料ですね!
しかし、まだまだこの「下水汚泥肥料」は日本国内の農家様に普及しているとは言い切れません。なぜでしょうか?
下水汚泥肥料が普及しない理由
下水汚泥肥料が広く普及しない理由には様々な要因が関係しています。
しかし、一番の理由は「偏見」によるものではないでしょうか。
「下水汚泥肥料」という文字を見ると、どうしても「廃棄物を農作物(食べ物)に」というイメージがついてしまい、抵抗感や偏見があるように思います。また、どのようなものが含まれているかわからない下水汚泥に、例えば重金属や有害化学物質、病原体などが含まれていて危険なのでは?と考える人もいるでしょう。
しかし、当たり前ですがそのような懸念に対する対策はすでに行われており、製造元での定期的な品質チェックや行政による監査などを通して、身体や圃場に影響が無いように品質が担保されています。
こういった事実を知らずに、イメージだけで嫌煙してしまうことは、少しもったいなくはないでしょうか。
下水汚泥肥料の使い方
ところで、下水汚泥肥料とはどのように使うのでしょうか。
一般的には、次のように10tトラックで納品され(ワイルドですね)
マニュアスプレッダーやブロードキャスターなどで鋤き込みして施肥します。
大規模にやられている農家様では、施肥効率も上がって良さそうですね。
下水汚泥肥料を入手する方法
ここまでの記事を読んで、下水汚泥肥料について興味がわいた人がいれば幸いです。では、実際にはどのように入手したら良いのでしょうか。
ノウキナビで販売しております!と言えればよかったのですが、今時点でノウキナビでの取り扱いはありません。しかし、次のような方法で入手することが可能です。
長野県の方
今回、この記事を作成するにあたり、長野県飯山市で下水汚泥肥料の製造を担っている「有限会社コエル」様にお話をお伺いすることができました。
有限会社コエルは、長野県飯山市で下水汚泥の収集と運搬、肥料化と肥料販売、また農家サポート事業(施肥支援など)をされている企業です。
なんと、初回限定10tダンプいっぱいの下水汚泥肥料「みゆき2」がワンコイン500円で提供いただけるようです。2回目以降は5,000円ということですが、それでもだいぶ低価格ですよね。(このサービスは長野県限定のサービスのようです。)
下記のサイトからお問い合わせいただくと、購入できるようですので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
それ以外の都道府県の方
長野県の有限会社コエルのように、下水汚泥肥料を製造されている
下水汚泥処理事業者様が各都道府県に存在しています。
どちらも小分けでの提供はしていないことが多そうです。運搬の都合上、最寄りの下水汚泥肥料提供事業者様を探していただいてお問い合わせいただくのが良さそうですね。
まとめ
今回は、昨今の肥料高騰時代において注目を浴びている「下水汚泥肥料」についてご紹介しました。イメージが先行しネガティブに思っている方も多いと思いますが、きちんと対策がなされています。むしろ、品質の良い有機肥料ですので利用者には好評のようですよ。興味がある方は、少しずつでも検討してみても良いかもしれません。