農業で地方創生!農業による地域おこしの成功例で「田舎暮らし」を学ぼう
皆さんは、『田舎暮らし』にどんなイメージをお持ちですか?田舎は不便とのマイナスのイメージでしょうか、それとも、自分らしく暮らせる安住の地といったプラスのイメージでしょうか。
現代の日本では、首都圏への人口集中が問題視されていて、地方創生への取り組みが顕著になっています。さらに、ここ最近は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、「人口密度の高い都市部での暮らしを見直して、地方でゆったり暮らしたい」と、考えをシフトしている方も増えてきているようです。
今回は、農業を中心とした地域おこしの取り組みをいくつか紹介しながら、田舎暮らしの魅力や地方創生の可能性について考えます。
地方の現状と都市部からの移住
全国の総面積のうち、都市的地域は1割ほどにも関わらず、人口の分布のおよそ8割が都市部に集中しています(データ出典:農林水産省 平成27年食料・農業・農村の動向)。さらに、農村地域は都市部に先駆けて人口が減少、高齢化も進み、集落としての機能の低下や地域資源の維持の危機が懸念されています。
しかしながら、若者を中心に農村への移住・定住の動きも活発化しているのも事実です。意識調査の回答や移住支援団体への相談数などをみても、移住を検討している若年層が増加傾向にあります。
地域おこし協力隊とは
都市部から農村への移住を検討している方向けの実質的な取り組みが、「地域おこし協力隊」です。2009年度から活動が始まった「地域おこし協力隊」は、都市部から過疎地域などに住民票を移した方の定住・定着を図る活動です。地方公共団体が移住者を「地域おこし隊員」として委嘱し、地域おこしの支援や農林水産業への従事などの活動を通して、定住を促す取り組みとなります。
2020年度の隊員数は5,464名(前年度比115名増)で、受け入れ自治体数は1,065自治体(前年比6自治体減)でした。任期満了後の定住者は、およそ6割に上るそうです。(データ出典:総務省 地域力の創生・地方の再生 地域おこし協力隊)
農業での地域活性化モデルケース
ここからは、具体的な成功事例をあげながら、農業を中心とした地域活性化の魅力を紹介していきます。
①地域おこし協力隊の活躍で棚田が再生
岡山県美作市上山は、かつては8,300枚もの棚田が壮観を誇っていましたが、少子高齢化により9割もの棚田が荒れてしまいました。棚田の再生にむけて一人の移住者が仲間とともにNPO法人を結成。その後、地域おこし協力隊や地域住民をメンバーに迎えて一般社団法人上山集落を設立。失われた棚田を再生する取り組みを実施し、20haもの面積の棚田の復元に成功しました。
その後も上山集落では、農産物の栽培や日本酒・地ビールの試験醸造、古民家カフェのリニューアルなど、多岐にわたる取り組みを展開しています。棚田の景観だけでなく、地域のコミュニティや伝統も復活させたいと夏祭りや秋祭りも実施。それらの取り組みに賛同する形で移住者も増加しています。今後も同団体では、棚田再生エリアの拡大や上山集落のブランド化を進めていくとしています。(参照:https://ueyama-shuraku.jp)
②特産物の開発で得た資金を人材へ投資
宮城県児湯郡新富町では、2017年に旧観光協会を法人化し、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)を立ち上げました。「世界一チャレンジしやすいまち」を掲げて、特産品を開発、その収入で得た資金を人材へと投資するといった地域型のサイクルで新しい取り組みをテンポ良く行っています。実際に、国産ライチのブランド化に取り組み、東京圏を中心に販路の拡大に成功。観光資源としての誘客や新規就農者の増加にも効果を現しました。
こゆ財団では、地域おこし協力隊を担い手に、スマート農業を実践するチームの支援にも取り組んでいます。AIやIoTを使用した農業の実現と、農業経験に関わらず人材が自立してビジネスを生み出すことを目指した「食と農のシリコンバレープロジェクト」の第一弾として、地域おこし協力隊を人材に起用した観光農園を立ち上げ、イチゴの生産を始めています。
(参照:https://koyu.miyazaki.jp)
③滞在型グリーンツーリズムで移住へ
宮崎県西米良村では、1998年から「西米良型ワーキングホリデー制度」を実施しています。同村は人口1000人ほどの小さな農村で高齢化も進んでいるため、農作業の繁忙期には人手不足が問題となっていました。そこで、人材の確保と村外者との交流を目的に同制度を開始。ワーキングホリデーというだけあって、制度の利用者は、農作業で得た賃金で村に滞在します。山村生活を体験しながら長期滞在ができると好評で、何度も村を訪れるワーカーが後を絶たないといいます。さらに、同制度をきっかけに移住した方のケースもあるのだとか。田舎暮らしに興味はあるけど、なかなか一歩が踏み出せないという方にも利用しやすいグリーンツーリズムを上手に使った成功例です。
(参照:http://nishimera-life.jp)
④ブランド野菜の生産で新規就農者を支援
福島県南会津町では、ブランド野菜の「南郷トマト」を核として、Iターン就農者を支援する取り組みが盛んです。南郷トマトは、国が認めるブランド野菜で、そのみずみずしい果実と爽やかな甘みが市場でも高評価を得ています。南会津町では、町外の就農希望者と個別に面談し、受け入れを強化。ハウス用地や住所の確保、営農指導まで、生産組合の組合員が「親方・里親」となって移住就農者を手厚くサポートしています。2014年〜2016年までの移住者82世帯のうち10世帯が就農者と、高い就農率が報告されています。これらの取り組みは、生産者の拡大や産地評価の向上を後押しし、南郷トマトのさらなるブランド力強化に繋がっています。
(参照:https://www.aizu-concierge.com)
まとめ
先述のモデルケースから、「棚田の景観」や「農作物の特産品」といった地域資源の創造を農業が支えていることや、農業をダイレクトに観光ツールとして発信する取り組みが一定の成果をあげていることが分かりました。農業を核にした経済活動が地域を活性化している実例は全国にまだありますし、これから新たなアイディアが生まれてくる可能性もあります。
農業で地域にどんな魅力を生み出すことができるのか…今後も、農業と地方創生の関係に目が離せませんね。みなさんもぜひ、これからの時代の「田舎暮らし」に注目してみては?