キッチンのマスコットに認定?身近な手作りアイテムでバジルを水耕栽培
今、あたらしい一歩を踏み出そうとする人々の流れが加速しています。
コロナ渦が私たちに否応なく突き付けたものは、結局「どう生きるか?」という問いかけなのかもしれません。
例えば、自分で食べるものを自身で培ってみること。それも、体と心があたらしく自由になっていく選択肢の1つに感じられます。
本記事のテーマは“あたらしい農スタイル”とされている水耕栽培です。
土を使わない水耕栽培は、現在の生活環境を変えないまま、プラスアルファのお付き合いを可能とします。
まずはビギナー向きのバジルから、植物と水と三位一体となれる水耕栽培を始めてみませんか?
水耕栽培の今と昔のおはなし
本題に入る前に、知っておくとちょっと便利な水耕栽培の歴史を披露します。
水耕栽培についての前知識やメリット・デメリットを把握する際には、こちらの記事を参考にしてください。
引用元:(https://www.tsuchikau.com/hydroponics-20200703/)
水耕栽培の起源と不思議
水耕栽培のルーツは、人類の起こりとともにあるといっていいかもしれません。
古代文明や神話が作られた時代にまで遡ると、最初の水耕栽培の幻影が見えてきます。
例えば、古代バビロニアの王宮付近にあった広大な庭園。その「バビロンの空中庭園」では、栄養分を含んだ水で植物を栽培する精巧なシステムを有していたのだそう。
今でいう水耕栽培や養液栽培に当たる、史上初の記録となっています。
そのほかにも古代王国のアステカは、肥沃な湖底の泥と真水を利用した農法があったからこそ、巨大文明を築き上げたとされています。
また古代のエジプトでも土壌に頼らず、ナイル河の岸でイネ科の水耕栽培が行われていました。
これらは、土を絶対とする農の黄金法則を打ち破る方法であり、植物が何を必要としているのかあらためて研究するきっかけとなっています。
水耕栽培の道のりは、歴史的発見の連続?
水耕栽培の歴史は、“植物とは何か”を知るための挑戦にほかなりません。
が、画期的な研究が行われたのは17世紀を跨いでからのことです。
欧州の医師であるヤン・ファン・ヘルモント氏が水耕栽培ならぬ水耕実験を行い、植物が土よりも水を生育の拠り所としていることを発見しました。
以後19世紀に入ると、植物の光合成のメカニズムや、水と土と空気から無機物と化学物質を得ていることなどが明らかになっていきます。
次いで植物に必要な栄養素も判明し、たとえ不十分な栽培環境でも、適切な養分液が処方されれば植物が育つことが証明されました。
それが今日の水耕栽培や養液栽培の型を形成しているといえそうです。
「あたらしい農法」としての水耕栽培へ
水耕栽培は最新技術と相性が良いことや、さまざまな農業課題の解決に繋がることから、世界が注目している農法です。
現代の水耕栽培は、まさに近未来的な工業のような農業スタイルを持つに至っています。
光源から温度、湿度、空調などすべてが管理された状況下において、水と液体肥料で植物を育てるシステム。
このように聞くと味も素っ気もないような印象を受けますが、新規参入への話は絶えないと聞きます。
また家庭で水耕栽培キットを買って楽しむ人が増えていることも、新たな時代の流れといえそうです。
農業においても不易流行は例外でなく、“あたらしさを追求していくことが不変の本質である”、という見方ができるかもしれません。
バジルの水耕栽培はココがポイント!
バジルを水耕栽培で育てるメリット
バジルを土壌ではなく水耕栽培で育てるメリットは、以下の点が挙げられます。
キッチン菜園で摘みたての味が楽しめる
キッチンの片隅でバジルを栽培するのなら、土よりも断然水がお手軽です。
バジルはイタリア料理などのアクセントとして加えたいハーブ。
菜園の様子を覗きながら、その日の気分で摘みたて即の味を楽しむことが可能になります。
屋内で完結するため育てやすさが格段にアップ
元来ビギナー向きで簡単に収穫できるバジルですが、水耕栽培ではいっそう育てやすくなります。
土植えにしないことで害虫や病気、土汚れの心配がほとんどなく、手間暇を極力かけずに管理できるのが人気の所以です。
栄養価・安全性がともに高いバジルが育ちやすい
水耕栽培に必要なのは、水と液肥のみ。
栽培に農薬を必要とせず、土に残っている薬剤や不純物などの悪影響を受ける心配もありません。
水耕栽培では根っこが養分を直接吸収するため、土耕栽培のそれよりも量が多く、栄養価に優れたバジルが収穫できます。
【バジル】水耕栽培の概要
栽培時期
バジルの発芽適温は約15~25度、生育適温は約20~25度です。
4月中旬から夏にかけての栽培が適していますが、室温を10度以上に調整すれば冬でも育てられます。
日当たり
バジルを精力的に育てるには日当たりが重要のため、室内でも窓際に置くようにします。
半日陰であれば一年中育てられますが、夏場の直射日光には当てすぎないように注意が必要です。
水換えと肥料
水耕栽培では、雑菌が繁殖しないように、水をしっかり循環させることがポイントになります。川の水が腐らないのはそれ自体に流れがあるからであり、土の循環システムの長所を取り入れることができない水耕栽培では、人の手によって水を清潔に保っておく必要があるのです。
バジルを育てる際は、水量や日当たりに関係なく、毎日水を取り換えましょう。
水を換える度に液肥も混ぜ入れますが、量が多かったり少なかったりしないよう一定にしておきます。
バジルの収穫期が近づく頃には、葉の様子を見ながら液肥を追加するなどしてください。
病害虫対策
水耕栽培は、病害虫の発生することが極めて少ない農法ですが、万一の場合もあります。
特に窓際でバジルを育てていると、アブラムシやハダニなどの害虫を何処からか引き寄せてしまうことがありそうです。
虫が発生した時は防虫ネットで覆うか、酢を散布するなどして経過を見守りましょう。
バジルを水耕栽培で育てる3つの方法
家庭内における水耕栽培では、身近なものを使って驚くほど簡単に始めることができます。
バジルを水耕栽培で育てるための方法は、大きく3つ。
ここでは、栽培の種類ごとに準備するものや育て方の流れを追っていきます。
1.スポンジで水耕栽培
[必要な道具]
- バジルの種
- 液体肥料
- 浅めのタッパー(ザルやカゴも可)
- 栽培容器
- 100均スポンジ
- トイレットペーパー
- ピンセット(竹串でもOK)
- はさみ
[育て方]
- スポンジをはさみで約3cm角の立方体に切り分け、表面に十字の切れ込みを入れる
- 水を浸したタッパーにスポンジを並べ入れ、十字の切れ込みに種を2粒ほどピンセットでつまみ乗せる
- 種の上にトイレットペーパーを被せて水分の蒸発を防ぎ、毎日水を取り換えながら発芽を待つ
- 発芽して根が10cmほど伸びてきたら栽培容器に移し替え、水換えの度に液体肥料を補う
- バジルの丈が約20~30cmに育ったら、下葉を中心に収穫を兼ねた摘芯をするか、別の株として育てていく
2.ペットボトルで水耕栽培
[必要な道具]
- バジルの苗か剪定した茎葉
- 液体肥料
- 空のペットボトル
- 培地(バジルを支えるスポンジやウレタンなど)
- カッター
- アルミホイル
[育て方]
- ペットボトルの上から1/3をカッターで水平に切り取り、飲み口を逆さまにして残りの2/3に被せる
- 藻の発生を抑えるため、土台となる2/3のペットボトルの側面にアルミホイルを巻く
- 土台部分の2/3~3/4まで培養液(水と液体肥料)を注ぎ入れる
- バジルの苗や剪定した茎葉を飲み口に挿し入れ、周りにスポンジなどの培地を敷き詰めて固定する
- 毎日水を取り換えながら、液肥を適宜加えて育てる
3. カンタン水挿し栽培
[必要な道具]
- 剪定したバジルの茎葉
- コップなどの透明な容器
- カッター
[育て方]
- 約10~15cmほどのバジルの茎葉を選び取り、切り口をカッターで斜めにカットする
- 先端の葉を2~3枚残し、大きな葉を切り落とす
- 水を溜めたコップ(肥料なし)に挿し穂を入れ、毎日水を取り換えながら育てる
後記
小さな緑に癒やされたい時から、料理を工夫してみたくなった時、何だか自由な生き方がしたくなった時にも。
水耕栽培は、あたらしい一歩をスムーズに踏ませてくれる園芸手法です。
土ではなく水で植物を育てる、そんな土いじりとは違った清涼感のある空間を楽しんでみてはいかがでしょうか。